続・ROCK‘N’ROLL退屈男

続・ROCK‘N’ROLL退屈男 B面⇒https://twitter.com/RandR_taikutsu

「博多ラーメン ガツン 本所本店」【蔵前】

f:id:taakun_latitude88north:20190909204925j:plain

 

◆「博多ラーメン ガツン 本所本店」【蔵前】

 

 ◎「全部入りラーメン」七八〇円+「替え玉」無料

 

 …生きる頼みの綱の週末の休日も、いとも簡単に終焉を迎え、週が明けてしまう。

  有り触れた毎日が訪れるが、昨晩からの颱風に因る暴風雨で、夜中も五月蠅く、

  窓に叩き付ける雨風と、雨水管を流れる水の音に熟睡も出来ずに朝を迎える。

  端から國鐵は走るのを放棄し、八時から動くとの報を受け、朝から悩んでしまう。

  こんな中、普段は脆弱で真っ先に力尽く埼玉新都市交通が平常運転と聞き、

  雨は止んだが風が吹き荒れる中を歩いて出掛け、何とか大宮駅に辿り着く。

  改札口の外には、手立てを失った群衆が溢れ返っているが、一先ず改札内へ。

  然し、此処は交通の要衝・大宮駅。

  駅員が言うには、非接触集積回路定期券に一〇〇〇円が入って居さえすれば、

  新幹線の改札を通過出来ると言う甘い囁き、否、単なる営業話術に引っ掛かり、

  八時十九分発「なすの」二六六号に乗車すれば、其りゃもう、空いていて快適さ。

  八六〇円を払ってでも、地獄絵図の様な鮨詰めの電車に乗らずに済み、

  心身の疲労を考えたら安いもので、九時過ぎには出勤出来、事無きを得る。

  こんな状況なので、昼御飯は独りぼっちで摂る機会に恵まれる。

  十三時四〇分に屋外に出れば、突き刺さる様な陽射し、焼け焦げる様な暑さで、

  呼吸をすれば気管支が火傷をして爛れそうで、汗を拭き拭き河を渡ろう。

  脱北者宜しく、スミダ河を決死の覚悟で渡り、スミダ区へ亡命を果たす。

  目指す先は、以前から、其の存在だけは認識しており、先週初めて、

  御歴々と共に御邪魔した此方へ、二週連続、二度目の訪店。

  木戸を開けて店内に入れば、豚骨ラーメン店らしい獣臭、家畜臭が充満する。

  先程、熱波で焼け爛れた気管支を癒すべく、思い切り此の香りを深呼吸。

  先ずは券売機で食券を購入し、端っこの止まり木にヨッコイショーイチ。

  食券を提示し、冷水を呷り、出来上がりをヂッと待つが、店内の音楽は財前部長

  厨房内は男性店員氏一名体制で切り盛りしている。

  そうこうして居る内に、五分程で盆に乗せられたラーメンと、別皿の具の御出座し。

  数日振りの対面だが、正しい豚骨ラーメンの佇まいに心躍る。

  別皿の叉焼一枚、味付け玉子、明太子、海苔五枚を移し、卓上の紅生姜、

  擂り胡麻を投入したら、先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。

  御覧の通り、外気に触れて、表面の膠原質、油分が凝固して行く様が素晴らしい。

  一口啜れば、初めて頂いた時にも感じたが、豚骨の出汁の力強い味わいは、

  一瞬、「極楽汁麺 百麺」を思わせる動物系の濃密さと風味を髣髴とさせる。

  下茹で、灰汁取り、長時間圧力煮込みに依り、豚骨を粉砕して裏漉しする為、

  背脂を入れた様な円やかな仕上がりで、豚骨から抽出された髄と言う。

  純度一〇割の豚骨は、円やかで滑らかな口当たりも、野性味溢れる味わいも主張し、

  通常の「ラーメン」は五三〇円と言う費用対効果は抜群で、素晴らしいの一言。

  其れも其の筈、「多田製麺所」の直営店と言う事で、麺の経費が削れるからだろう。

  其の麺は、季節や気温、湿度、水温の変化に応じて、日々、加水量等を吟味し、

  豚骨スープと相性抜群の低加水麺を製造していると言い、特に夏期は気候を考慮し、

  鮮度保持性の高い冷蔵貯蔵で麺を熟成させ、旨味が凝縮した状態を維持との事。

  もそもそとした感じの細麺は、粉の風味も感じられて良いじゃないか。

  具の叉焼二枚は薄っぺらだが、博多ラーメンらしい仕上がり。

  味付け玉子は固茹で気味だが松崎しげる色で、黄身の中心部はねっとりとしている。

  明太子は箸休め的な感じでも頂け、「九州じゃんがら」っぽさも受ける。

  海苔が五枚と言うのも大奮発だな。

  さて、流石は製麺所の直営だけあり、替え玉が一回無料と言う大盤振る舞い。

  然も、嬉しい事に「粉落とし」は勿論、「湯気通し」迄有るから感激。

  其の「湯気通し」で御願いすれば、茹で時間二秒、菜箸で勢い良く撹拌して笊揚げ。

  そして、差し出した丼へと入れて呉れ、此れを啜ると言うより、喰らい付く。

  生と言って良い麺は、噛むと歯にくっ付く程で、治療中の詰め物が取れそうだ…。

  「よかろうもん」で豚骨ラーメンの何たるかを覚えてから二〇年経つが、

  濃密で重厚な豚骨スープと、茹で時間に依って変幻自在の細麺は魅力的だ。

  最後はプースーを飲み干せば、丼の底には、膠泥を乾かして削った様な、

  建築資材を思わせる骨粉、髄が沈殿しており、其れも残らず頂くぽんこつおぢさん。