「海野宿」で蕎麦を頂き、妹家族を載せて父親の実家の上田へと辿り着いた。
二年前に亡くなった祖父の墓参りと、具合の良くない祖母への顔見世が目的だ。
幾ら標高が高いとは言え、盆地なので暑いのは変わらない。
お天道様が南中高度から少し傾いた頃、近所を散歩がてら外へ出た。
相変わらず暑いが、如何にも夏休みらしくて此れは此れで良い…。
絵の具で描いた様な青空は抜ける様に高く、
緑の山々のくっきりとした稜線が映えている。
周りは全て田圃か畑。
青々とした稲が、吹き抜ける熱風に揺れている。
蝉の鳴き声に囲まれて暑苦しいと感じる一方で、
田圃の用水路の水の音や、風鈴の音が涼しさを与えて呉れる。
畑に行くと、茄子が美味しそうに生っている。
更に道を歩くと、向日葵が咲き、蜻蛉が飛び交う光景も見られた。
昔、子供の頃によく遊んだ神社の遊具はすっかり朽ち果ててしまっていた。
家の裏の、流木を刳り貫いた様な木の街灯は相変わらず其処に居た…。
夜、一杯遣って、酔い覚ましに外へ出て夜空を仰げば、
満天の星空が広がっている。
関東辺りでは有り得ない程の無数の星が散りばめられている。
流れ星も見られた。
今は亡き祖父に連れられ、田圃の脇で沢蟹を獲ったあの夏が懐かしい…。