何か行動する度に電流が走る様な痛みが有るのでは仕事に成らない。
今日の内勤業務は早々に片付き、仕事絡みの雑用も有ったので、十六時過ぎには会社を出、
序に病院に寄る了承を貰い、帰宅の途につく…。
早速、家の近所の整形外科へとよろめき乍ら駆け込む。
問診表を書かされ、診察室に通されると直ぐに、レントゲンを撮ると言う。
放射線を浴びるのか…。
技師の言われるが儘、されるが儘、ズボンを膝迄下げ、右を向いたり、左を向いたり。
丸で、俎板の上の叉焼の様…。
で、現像された物を診察室で見せられる。
具体的な病名は告知されなかったが、何でも、椎間板が擦り減って来ているらしい。
腰の上部は等間隔に椎体が存在しているが、下部の方は其の間隔が詰まっており、
椎間板が磨耗している為にそう成っているとの事。
診察台に仰向けに寝かされ、御医者が僕の足を持って、痛みが出るかを確かめ出す。
シンクロナイズド・スイミング宜しく、人の足を持ち上げ、痛かったら言って呉れと言うのだが、
正直、腰の痛みよりも、身体が余りに固い所為で、腿の裏の筋がブチッと切られそうで、
寧ろ、其方の痛みで「痛いっ!」と叫んでしまった。
如何せん、立位体前屈が+三〇センチ強で、膝の高さ迄しか手が下りない程なので…。
其の後、リハビリテーションを行う部屋に通される。
其処には様々な機具が有り、其の中で老人に混ざって治療を受ける。
先ずは台にうつ伏せに寝かされ、尻を半分捲くられ、腰にビリビリする物を当てると言う。
「何の死刑囚だよ!」と心の中で呟き、吸盤の付いたエレキテルを放電される。
「プチシルマ」じゃないんだから…。
一〇分程、電氣ショックを受け、次は中世欧羅巴の拷問具の様な装具を装着させられる。
腰に、丸でリアクション芸人が逆バンジージャンプをする時の様なベルトを巻かれ、
ベッドに仰向けに寝せられ、脇をジェットコースターの安全装置の様な物でガッチリと固定される。
そして、腰のベルトにはワイヤーが付いており、足の方向へと負荷が掛けられ、
腰がどんどん引っ張られて身体が伸びて行く。
所謂、「牽引」と言う奴だ。
「お笑いウルトラクイズ」だったら、其の儘、引っ張られて海に落とされるのだが、其の心配は無い…。
此れは意外と気持ち良く、詰まって縮んだ腰骨が伸ばされている感じで快適だ。
只、ベルトと一緒にズボンも引っ張られて脱げそうになる辱めが嫌だ…。
そして、最後はマッサージ。
正直、本職の人からマッサージを受けるのは初めてだ。
見習い風の若い兄ちゃんだったが、気持ち良くして呉れるのならば問題無い。
一番問題なのは、僕が異様な擽ったがりと言う点。
子供の頃、床屋で顔を剃られるのが擽ったくて、何時も尻の頬っぺたのムズムズに耐え兼ねていた。
腰の上部を押されている内は全く平気だったのだが、問題は腰の下部。
痛くて大変なのだが、擽ったくて擽ったくて、腕を抓って我慢する。
尻の頬っぺたをグリグリと押されてもう駄目…。
子供の頃に味わった、あのムズムズが甦り、危うく情け無い声を漏らしてしまう所だった。
幸いにも其処で終わり、スースーする薬を塗られて追い出される。
鎮痛剤と胃薬、そして湿布を処方されて終了。
何と無くは楽に成ったが、ずっと座り続けた後に動き出すのが怖い。
今度はマッサージ屋でマッサージだけを受けたいのだが、擽るんだもんなぁ…。