◆「加賀屋」【大宮】
…火曜日。
一週間が始まって、未だ二日目だと言うのに、此の日も襤褸雑巾の様。
十八時前に職場を出て、トヴォトヴォと家路を辿る。
偶には、寄り道して帰ろうかと、大宮駅で途中下車。
煮込みを摘みに、ピーホツでも呑んでやろうかしらと、久し振りに此方へ。
一〇年は来ていないだろうか。
二〇代の頃、新板橋で此方の「煮込み鍋」と頂いた時は衝撃的だったな…。
◎「生ビール(中)」六五〇円
…先ずは、一日の疲れを癒して呉れるのは麦酒しか無い。
少々、御値段は良いが、まあ、僕の精神安定剤、花粉症の消毒剤なので、
薬代をケチってはいけまいと、グイッと呷る。
嗚呼、生きていて少し良かった…。
乾涸びた心と身体を一気に潤して呉れる。
◎「特製煮込み鍋」四六〇円
…そうそう、此れ此れ。
土鍋で出される此のもつ煮込みに、若かりし頃、衝撃を受けたな。
こんなに旨いもつ煮込みを頂いた事が無かったから。
今と成っては、随分と呑んだくれて来たので、驚きゃしないが…。
甘目で濃口のルーシーに、ぷるっぷるの豚もつが良く合う。
昔よりは量が少ない気がするが、豆腐で誤魔化されたって良いじゃないか。
此れをプースーにしたつけ麺を食べてみたい。
◎「ホッピー」四一〇円
…あっと言う間にルービーを呑み終え、続いてはピーホツ。
「ルービーとか、ピーホツとか幾つだよ!」と知らない所で文句言われる前に、
きちんと言っておくが、三十九歳児だ。
煮込みにはホッピーと言う形が好き。
気の抜けた、何ともだらしない酒だが、自分に似ていて心地が良い。
◎「真鱈白子ポン酢」四五〇円
…壁一面に貼り出されたメニューの中から、蠱惑的な物を見付け出す。
こんな所で、雄の精巣に出会えるとは。
冬も終わり、もう頂けないだろうなと思っていただけに嬉しい。
プルンとして、トゥルンとした食感と、滑らかで円やか、クリーミーな味わい。
ポン酢の酸味も良く、若布や胡瓜は余計だが、まあ良い。
◎「カキ酢」五八〇円
…此れ又、僕には堪らない物を見付ける。
白子と並んで、冬にしか頂けない生の真牡蠣。
夏場の大きな岩牡蠣も良いのだが、小さい真牡蠣の方が数を頂けるのでね。
プリップリで、口内に海の牛乳たる由縁が一気に広がる。
牡蠣に火を通しては勿体無い。
生で頂ける物は、生で頂くに限る。
◎「さきいかの天ぷら」四六〇円
…以前に頂いた、此方の御薦めを久し振りに。
裂き烏賊を天麩羅にしたと言う、何とも、酒呑みには堪らない一品。
裂き烏賊は甘目で、天麩羅はカラッと揚がって軽い仕上がり。
マヨネーズに一味唐辛子を振り掛けた物を塗して頂く。
凭れる感じがしないので、際限無く頂けそうで止まらない。
◎「韓国風ちぢみ揚げ」四九〇円
…此れも御薦めの赤字で記されているので、発注してみよう。
烏賊や韮が具として入り、焼くと言うより、表面がカリッとして、
其の名の通り、油を多目に、揚げる感覚で焼き上げた物なのだろう。
◎「焼きうどん」四九〇円
…麦酒一杯、ホッピー三杯、バイスサワー二杯を頂いたので、
そろそろ、〆に取り掛かろうと、焼き饂飩をば。
う~ん、普通だったな…。
良いんだ、良いんだ、普通で。
普通である事は尊い事なんだから…。
すっかり酩酊し、良い感じでへべのレケの駄目中年…。