◆「北大塚ラーメン」【大塚駅前】
◎「チャーシュー麺(中)」八〇〇円
…木曜日。
元日から蟹工船に乗船し、労働していた為に、全く以って、正月を味わえず、
何一つ、正月らしい事もせず、出来ず、人間らしさ、日本人らしさを失う。
ゆっくりと炬燵で御節料理を摘んで、御屠蘇を呑んで過ごすなんて、
夢の又夢、絵空事、望んではいけない事なんだろうなと実感した…。
さて、話は遡って一月五日。
此の日も、朝から池袋に出向き、午後から蟹工船に乗船。
移動を開始する前に、昼御飯を摂ろうと画策してみる。
此の日は、大塚駅へと向かってみる。
勿論、当ては、昨年末、僕の中に突如として、彗星の如く現れた此方。
丼一面、叉焼に覆い尽くされたラーメンが蠱惑的、魅惑的で、
最初にしてグッと心を鷲掴みにされ、すっかり虜と成ってしまったので。
寒風吹き荒む中、店に着けば、店頭には四人組のゆとり世代の高等学校生。
自分で稼いでもいない癖に、此の手のラーメンを頂こうなんぞ、一〇年早い。
自分で汗水垂らして稼いだ金で頂くからこそ旨いのだよ。
一〇分強、ヂッと震える様に待ち、中に入り、券売機で食券を購入。
程無くして、カウンター席の間に挟まる。
厨房内は件の大陸系の御夫婦に、此の日は男性アルバイト店員氏も加わる。
女将さんの「ドウモ、ドウモ、ハイ、ドウモ~」と言う緩い声が印象的だ。
如何やら、中華人民共和国ではなく、蒙古出身と言う情報も散見される。
御主人に食券を手渡し、「中盛りで」と御願いする。
出来上がり迄、厨房内の様子を食い入る様に見入り、腹を減らす。
麺を茹でる御主人、叉焼を切る女将さん、狭い厨房内だが確りと纏まっている。
一〇分強で、今年最初の「肉麺」の御出座しだ。
二度目だが、此れは何度見ても圧巻で、恐れ入谷の鬼子母神だ。
蓮華を手に取り、先ずはプースーを、肉の隙間に捻じ込む様にして沈ませ掬う。
プースー自体は、あっさり目の醤油味で、昔乍らの味わいも感じられる。
然し、其処に、大量の叉焼から溢れ出した旨味が染み出し、旨さが増幅される。
思わず、「あ゛~っ」と唸ってしまう。
此れは、大量の叉焼が有ってこそ成立する味わいだな。
麺はと言うと、中華麺と書かれた袋から出されて茹でられた物で、
特筆すべき点は無いが、此の大量の叉焼を前にしては、其れ位が丁度良い。
此れで、プースーも麺も際立ってしまったら、喧嘩し合うだろうから。
さて、女将さんが丁寧に包丁を入れたバラ肉の叉焼。
今回のは、赤身はやや硬めで、軟らかくて蕩けると言う感じは無いのだが、
旨味がぎっしりと詰まって、ふんだんに旨味が堪能出来る素敵な物。
脂身はトロンと蕩け、プルンプルンで軟らかくて最高だ。
ざっと見積もって、十二~十三枚は入っていようか。
食べても食べても無く成らない、否、食べてしまうのが惜しい位だ。
矢張り、此方は叉焼を増さないと意味が無いと確信する。
食べ終えた傍から、次回の訪店が既に愉しみだ…。