◆「伝説のすた丼屋」【大宮】
…今週も何とか、五連勤を終え、休日に漕ぎ着ける。
先週金曜日の一件以来、心がざわつき、漠然とした不安に襲われ、
生きる気力をすっかり喪失してしまったが、死ねないので生きているに過ぎない。
命を絶てる人は、本当に勇気が有ると、尊敬すらしてしまう…。
昨日はバリウムの影響で、終始、何だか調子も思わしくなく、
二十二時過ぎには寝床に入り、何時の間にか疲れ果てて寝てしまう。
今朝は七時過ぎに起き出し、極めて自堕落に午前中を暮らす。
十三時から野暮用が有る為、正午前に家を飛び出し、大宮の街に繰り出す。
其の前に昼御飯をと、彼是と物色するが、気が乗らない所為か、
何れも決め手に欠け、無難に、此方へと落ち着く。
◎「生ビール」三九〇円
…店に入り、空席も確認し、先ずは券売機で一通り食券を購入する。
食券を手に、着席しようとすると、東南亜細亜風の訛った女性に回収される。
厨房内は人手は居るが、「研修中」の名札の店員氏も多く、慌ただしい様だ。
誰も、僕の麦酒に取り掛かる様子は無く、じっくりと待つ事にする。
着席から五分弱で、漸く麦酒が登場し、ジョッキも冷えていて旨そうだ。
偶の休日、昼間っからグイッと呷れば、良く冷えて、爽快感たっぷりだ。
喉を冷やっこいプリン体が駆け抜け、何とも幸せな時間。
◎「すたみなライス」六三〇円
…食事はと言うと、名物の「すた丼」や、お気に入りの「すたみなカレー」、
何を頂こうかと悩んだが、御目当ては、此の「すたみなライス」と言う定食。
「すた丼」の頭と御飯が別々になっており、「すた丼」の方が、
生玉子が付くので得な気がするのだが、今回は付け合わせの野菜が目当て。
普段、宗教上の理由で、野菜は回避するのだが、此方は話が別だ。
今と成っては珍しくなってしまった、橙色のフレンチドレッシングが、
此方には卓上に配されており、掛け放題で、此れを堪能したかったのだ。
昨今、白いフレンチドレッシングは有るのだが、橙色は皆無、廃盤の様な感じ。
旧き良き時代の洋食屋や定食屋の付け合わせの野菜には、必ずと言って良い程、
此の橙色のフレンチドレッシングがぶっ掛けられていたものだ。
運ばれて来た「すた丼」の頭の付け合わせの野菜に、たっぷりと、なみなみと、
其のドレッシングを掛け、麦酒の摘みとして、千切りキャベツを頬張る。
嗚呼、此れだ、此れだ、此の味だ。
噂では、白いフレンチドレッシングにケチャップを入れた物と言われるが、
此れをたっぷりと、野菜を頂けば、「すた丼」の頭を炒めたルーシー、
即ち、大蒜の風味を最大限活かしたと言う、秘伝の大蒜醤油ダレが染み、
キャベツがクタッとしんなりとして、ドレッシングと相俟って最高に旨い。
こうすりゃ、僕だって、率先して野菜を頬張れるのだ。
さて、すっかり御負けの様に成ってしまったが、主役の「すた丼」の頭、
豚肉を頂けば、厳選された脂身迄旨い甘味の有る、軟らかくジューシーで、
脂身はプルンプルン、濃い目の味付けが何とも食欲をそそる。
中華鍋と高火力で一気に仕上げられ、素材の旨味を閉じ込める職人技が売り。
時には麦酒の摘みとして、時には御飯の御数として頂けば、最高に旨いな。
追加で野菜を発注し、ドレッシングをたっぷりと注ぎ、麦酒も御替わりし、
ゆっくりとしたかったが、時間も無く、五人組が二組連続と言う、
極めて迷惑な来店も続いており、券売機前が囂しいので、嫌気が差して退店。
そんなに大勢で食事をしたけりゃ、「すかいらーく」にでも行けよ。