◆「玉川大盛軒」【明覚】
◎「つけ麺」九八〇円
…生き続けるに当たり、唯一の希望である休日は、あっと言う間に過ぎ去る。
初日の昨日は、流石に体内の細胞がストレスで損傷を受けているのが明らかで、
緑に囲まれ、森林浴も兼ねて、心身を再生したいと思い、大宮公園へ出掛け、
茣蓙を敷き、鳥の声を聞き、風に吹かれ、音楽を聴き乍ら、昼間っから、
酒を呷り、一流百貨店・高島屋で購入した寿司や角煮を摘みに一杯飲る。
夕方に帰宅し、些か午睡し、晩もゆっくりと酒を飲り、午前零時過ぎ迄…。
今朝は一層怠さが残るが、仕事の日の朝とは比べ物に成らない位に気が楽だ。
身体は怠いのだが、何だろう、此の気分の軽さは。
九時過ぎに何とか起き出し、風呂に入って身を清め、全うな人間に戻る。
午前中は極めて自堕落に過ごし、十一時半を廻り、漸く、行動を開始する。
二連休最終日なので、家でゆっくりして居れば良いのだが、何だろう、
家でヂッとしていると、余計にサザエさん症候群を前倒しで発症するので、
少しでも外に出て、現実逃避し、悪足掻きと言うか、兎に角、忘却したい…。
と言う訳で、昼御飯を頂きに、自動車を走らせる。
不意に思い付いたのが、昨年二月二十七日に一度だけ御邪魔している、
ときがわ町玉川に在る此方で、日本で唯一と言う「全卵無加水麺」を頂きに。
東京環状、国道二五四号線、県道一七三号線・ときがわ熊谷線を通り、
十三時前に店着すれば、駐車場も、店内も空きが有り、ホッと一安心。
先ずは、店頭の券売機で食券を購入するが、前回は「しょうゆ拉麺」に、
一日限定一〇個の「みそ漬け玉子」を頂いたが、今回は変えてみよう。
此の暑さなので、「つけ麺」の釦を押っぺし、「みそ漬け玉子」はもう完売。
店内に入り、一番奥のカウンター席に空きを見付け、ヨッコイショーイチ。
食券を提示し、雪隠に行ったり、頂く準備を整えると、冷水が出される。
厨房内は、故・三遊亭圓歌師匠に似た御主人と、奥様の二人体制。
店内のテレヴィヂョンは「のど自慢」が点いており、素人の歌声を聞き流し、
只管に出来上がりと大人しくヂッと待つ。
厨房内を見ると、調理は殆どを奥様が熟し、御主人は裏方業務に廻っている。
そして、十五分強で、つけ麺が手渡され、此れを受け取り、手元に下ろす。
量感が有り、何よりも、胡瓜が一際異彩を放っている。
さて、麺の上の胡瓜以外の具をつけ汁に移してから、いざ啜ろう。
つけ汁はと言うと、基本は醤油味だが、ピリ辛の中華風とも見える味わいで、
表面には薄っすらと背脂が浮かび、辛味噌の様な物が入り、具は白髪葱。
スープの拘りとしては、厳選素材と言う宗田鰹､煮干し､利尻昆布を使用と言い、
味の基礎は、其れ等の素材が活きているのだろうが、ピリ辛が勝っている。
麺はラーメン同様の代物。
水、鹹水、防腐剤、保存料、色素等を一切使わず、卵、塩、バターで仕上げた、
「全卵無加水麺」を謳っており、ラーメン専門店では全国で此方だけらしい。
モソモソとした、何とも不思議な口当たりが、初めて頂いた前回は衝撃的で、
強烈な印象を残したが、二回目の今回は、然程の驚きは無かったかしら。
其の麺は、茹でる前は橙色を帯びているが、茹で上がると黄色へと変化し、
縮れが効いていて、いざ啜れば、モソモソとした食感が個人的には好きだ。
言われてみれば、確かに洋風なと言うか、バターの様な風味も感じられる。
麺の釜揚げ時間も数秒の狂い無く湯切りをすると言うのが自信の表れで、
硬さと旨さが逃げない様、振り笊を使用していると言う。
具はと言うと、叉焼は大判のハムの様な形状の物が三枚入る。
質の高い肩ロースを使用していると言い、機械で薄く切り出される。
赤身のムチッとした食感の物で、豚臭さは無く、旨味が強い。
麺麻が此れ又、凄い太さの物。
僕が今迄頂いて来た数々の麺麻の中で、最も太い、「最太」と言って良かろう。
鰹節、天然利尻昆布等の出汁で確りと味付けをしていると言い、
流石に、簡単に噛み切れると迄は行かないが、ポリポリとした食感が良い。
他には海苔三枚、鳴門、茹で玉子半個が入り、何れもつけ汁とは良く合う。
懸案の胡瓜に関しては、温かいつけ汁に投入するのに躊躇いを感じた為、
冷やし中華宜しく、其の儘で、箸休めの様な役割として頂く。
一八〇グラムと言う麺は少ないと感じる程で、寧ろ、具の方がたっぷり。
最後はピリ辛のつけ汁をグイッと飲み干し、汗だくで店を出る社会不適合者…。
～御負け～
東松山の箭弓稲荷神社。
吉見百アナ〇、もとい、吉見百穴。
源 範頼が建立したと言う、安楽寺の三重塔。
