続・ROCK‘N’ROLL退屈男

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「ラーメン とん八」【八王子】

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◆「ラーメン とん八」【八王子】


 ◎「正油ラーメンセット」六〇〇円

 …今日は当初の予定通り、朝一で南平に入り、一通り仕事を熟し、
  十三時に全てを終え、次の地、福井を目指して旅立つ。
  南平から京王線に乗り、JR横浜線に乗るべく、京王八王子駅で下車する。
  駅を降り、JR八王子駅方向へ歩き出し、序に昼御飯を摂れそうな店を探る。
  駅を通り越し、商店が続く通りに出、「八王子ラーメン」と言う文字を発見する。
  折角、八王子駅で乗り降りする機会も滅多に無いので、御当地・八王子ラーメンを食そう!
  そう、不意に思ったのであった。
  つい先程迄、南平の行列店「弘前軒」に行く気満々だったのだが、 
  既に形成されている行列を見遣り、嫌気が差して、先を急いだばかりだった…。
  店先には「冷やし中華」の貼り紙も有り、純然たるラーメン専門店ではない気がした。
  其れよりも、重たいトランクケースを転がし、新たに店を探し出すのが億劫だった。
  時刻は十三時半、決して繁盛しているとは思えない様相だが、腹さえ膨れれば良いと言う思いだ。
  店頭の券売機に対峙し、最も価値が見出せそうな「ラーメンセット」の釦を押す。
  「ラーメン、半餃子、半ライス、キムチ付き」と謳われており、価格設定は至って良心的だ。
  食券を渡すと、「あっさり、こってり?」と、ぶっきら棒に訊かれる。
  生来の腕白なので、つい、「こってりで!」と反射的に答えてしまう。
  八王子ラーメンを食すならば、あっさり目の醤油味が良かろうに…と後から思う。
  何の当ても無く入った店内で、何の考えも無く、ぼんやりと店外を見乍ら時間を潰す。
  ぼんやりと、未開の地・福井の想像を巡らせ乍ら…。 
  不意に、向かいの天丼屋のメニューに興味が寄せられた刹那、事務的にラーメンが運ばれて来る。
  僕が想像した八王子ラーメンは、醤油味のスープがもう少し澄んだ物だったが、
  出て来た物は、茶褐色をし、濁った、如何にもコッテリとしたラーメンだった。
  然して期待は寄せていなかったので、吃驚はしないが、想像との乖離に多少の躊躇は有った…。
  時間も無いので、蓮華で早速、透明感の無いスープを啜る。
  コッテリとした豚骨系の、油膜が張る様な濃厚さが口内を支配する。
  然し其れは、決してくどくなく、何か懐かしさを思い起こさせる物だった。
  次に、魚介系のふんわりとした香しい風味が襲い、一気に和風な味わいを感じさせる。
  鶏ガラと魚介系を合わせたあっさり系ではなく、豚骨を合わせたコッテリ系。
  一瞬、珍しい取り合わせの味に感じられるが、何て事は無い、今流行りの魚介系醤油豚骨に過ぎない…。 
  麺は細麺で、九州地方を髣髴とさせる感じで、特に、「バリカタ」やら「ハリガネ」と言った、
  麺の腰を重んじる茹で加減は全く以って感じられず、店主の勘に任されたものらしかった。
  コッテリとしたスープとの絡みが良く、博多ラーメン宛らに啜ってみせる。
  具は、値段の割りには多く入れ過ぎではないかと心配する程の麺麻と、
  鉋で削ったのではないかと見紛う程の叉焼、そして、丼にペタッとへばり付いた海苔。
  今日日、ラーメンが単品で四五〇円と言うのだから、チェーン店以外では驚きの値段だ。
  其れで居て、吃驚する程旨くはないが、其れらしさは出そうという努力が窺える…。
  ラーメンと一緒に、半ライス、キムチ、そして、貼り紙には明記されていないが、
  茹でた萌やしに醤油ダレを掛けた物が登場する。
  幾ら何でも、六〇〇円で採算が取れるのかと、心底、心配してみる。
  貪る様に、キムチを摘み、御飯を口に運んでいると、最後に餃子が遣って来る。
  「半餃子」と言うだけ有って、三個、更にちょこんと載っている。
  卓上の「餃子のたれ」を、皿に区分けされた醤油を垂らす区画に流し込む。
  タレの味は敢えて確かめなかったが、醤油に酢を合わせた物だろうと言う憶測は立った…。
  其処へ、餃子を箸で持ち上げて浸す。
  随分とずっしりとした重みが有り、「自家製」と謳っているだけあり、
  しっかりとした中身が詰まっているのであろう。
  事実、歯を当てると、びっしりと挽肉が詰まっており、此方も、採算を心配してしまう…。
  肉汁が飛び出し、笑みが零れると言った類の餃子では無いが、心のモッキリ折れた中年の、
  錆び付いた心を少しは柔和にさせる役には立つ餃子であった…。
  「自家製キムチ 食べ放題」と言う貼り紙を見付けたが、出された時点で既に盛りが良く、
  此の「半ライス」を元手にがっ付くには、余りに心許無かった…。
  如何せん、僕は「おかずっ喰い」ではなく、寧ろ、「御飯っ喰い」なので。
  魚介の風味の効いた、油膜の張りつつあるスープを粗方平らげ、
  水で口内の油分を洗い流す様にし、未開の地・福井へ向かうべく、JR八王子駅へと歩き出す。
  重たいトランクケース、鞄と一緒に、先週目にした重苦しい光景も引き摺る様にして…。