続・ROCK‘N’ROLL退屈男

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「ぎょうざの満州」【若葉】

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◆「ぎょうざの満洲」【若葉】


 ◎「冷し中華と餃子」七六〇円

 …金曜日。
  此の日も暑さの所為でろくすっぽ熟睡も出来ず、朝起きればボーっとして身体が重たい。
  寝る前よりも疲労しているのではないかとさえ感じられ、全く寝た気がしない…。
  熱帯夜なんて良い迷惑で、良い事は何一つ無く、ストレスの種にしか成り得ない。
  三連休を前にした最後の日、灼熱地獄の中、重たい鞄をぶら提げ、
  川越線東武東上線を乗り継ぎ、若葉駅へと辿り着き、其処から二〇分歩くと言う荒行…。
  只の罰ゲーム以外に無く、何が悲しくて、汗を瀧の様に噴出させて歩くのか。
  歩き乍ら、自問自答を繰り返し、脳内が可笑しくなりそうで、途中、何度も挫けそうになる。
  仕事を開始する前に残り少ない全ての元気を使い切ってしまいそうな疲労で、
  本当、生きている事が嫌に成る程に暑いのが嫌いで、自害したくなる…。
  然し、仕事は仕事で当然乍ら、しっかりと熟し、十四時に終了し、
  折りしも太陽は南中高度、此の中を来た道を戻って歩く…。
  途中、昼御飯を頂こうと目星を付けていた店が、「私用により昼休みます」と言う、
  極めて勝手な貼り紙されており、其れが余計に暑さを増大させ、怒りさえ込み上げて来る。
  仕方無く、若葉駅前の此方を訪れれば、先ず外す事は無いので、此方に決定。
  何を食べようかと彼是考える思考は疾うに停止し、動き回る気力も消失している…。
  十四時半前に店に入ると、昼時を過ぎているのでガラガラで、安心してテーブル席に陣取る。
  其のエアーコンディショナーの涼しさたるや、南極のペンギンにでも成ったかの様で心地好い。
  冷水をグイッと全て飲み干し、卓上の水差しから水を注ぎ、更にもう一杯飲み干す。
  其れから漸く、メニューを眺める余裕が出る。
  普段ならば「ダブル餃子定食」を頂くのだが、流石に身体は量ではなく涼を求めているので、
  期間限定のメニュー「冷し中華」と言うのが目に入り、其れを餃子付きで発注する…。
  其の間も水を立て続けに飲み、腹がタッポンタッポン言う程に膨れ上がる。
  そして、先ずは餃子から先に運ばれて来る。
  小皿には酢を八割、醤油を二割入れ、タレを製作する。
  普段ならば酢は七割なのだが、此の暑さに乗じて、酸味を多くしてみる。
  餃子を箸で摘み、タレに浸し、ガブリと一口で頬張ると、皮のモッチリ、モチモチとした、
  何とも言えない弾力と、皮自体に旨味が有り、味わい深さが感じられる。
  そして、中からは肉汁が、決壊したダムの様に溢れ出し、口内が肉汁の渦に巻き込まれる。
  幾ら暑いと言えども、此の旨さは格別で、脇に麦酒が無い事が心底悔やまれる…。
  程無くして、冷やし中華が運ばれて来るが、何とも涼しげな硝子の器で、見た目からして良い。
  然も、硝子の器は冷やされており、冷たいと言うから有り難い。
  さて、此方の冷やし中華は醤油ダレで、個人的には胡麻ダレの方が好みだが、まあ良い。
  具は千切りの叉焼、胡瓜、錦糸玉子、若布、萌やし、紅生姜、脇には練り辛子が添えられている。
  先に余計な野菜から遣っ付け、其れから麺に取り掛かる。
  此方の麺類に関しては然したる過大な期待は寄せていないが、思ったよりも腰が効いており、
  ブヨブヨとした茹で過ぎ感は無く、弾力の有る歯応えで旨い。
  醤油ダレも酢が効いて、普段は酸っぱい物は敬遠して嫌うのだが、此の暑さと来れば、
  妊婦並みに酸っぱい物を欲し、食べ易い物に走り勝ちだが、バテるよりは良かろう…。
  具の割りに麺が少なく感じた冷やし中華も、あっと言う間にペロッと平らげ、
  ギラギラと照り付ける真夏の太陽の下へ飛び出して行く…。