「おでん郷土料理山さん」【金沢】 - 続・ＲＯＣＫ‘Ｎ’ＲＯＬＬ退屈男

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◆「おでん郷土料理山さん」【金沢】

　…一月七日。
　　大して目出度くも無いが、此の日、三十五回目の誕生日を迎え、
　　遂に四捨五入で四十歳、即ち、俗に言う「アラよんじゅう」の仲間入りとなる…。
　　取り立てて、特別な感情や思い入れは無いが、年末は土曜日も労働し、
　　天皇誕生日も労働し、三〇日迄労働し、身も心も参ってしまったので、
　　誕生日は溜まっている特別休暇を取り、金沢へ二泊三日の旅行に出掛ける。
　　大宮駅八時十四分発の夢の超特急・新幹線「ＭＡＸとき」三〇七号に乗車し、越後湯沢駅に着けば、
　　一面の銀世界が拡がり、非日常の世界の飛び込んだ様で心躍る。
　　其処から特別急行「はくたか」四号に乗り換え、一路、金沢へ。
　　降り立つと、関東地方とは違った空気の冷たさだが、暑がりなので、然程、寒さは感じない。
　　駅前の「金沢都ホテル」に荷物を預け、先ずは腹拵え。
　　事前に何の下調べもしていない為、取り敢えず、駅に隣接している商業施設の飲食店街へ。
　　冬の日本海に来たのだから、魚をしこたま喰い散らかす気持ちで来ている。
　　一通り店を物色し、店頭のメニューを勘案した結果、此方に飛び込みで入ってみる…。

　◎「生ビール（中）」五〇〇円
　…テーブル席に腰掛け、世間様は未だ労働している金曜日と言うのに、
　　自らの誕生日を祝い、且つ、土地勘の無い場所に来たと言う浮かれ気分から、背徳の昼酒を…。
　　麦酒を発注し、外は雪が降る程に寒い陽気だが、建物の中は暖房が効き過ぎて暑いので、　
　　冷たい麦酒が殊更旨く感じられるが、其の要因は、他にも有ろう…。
　　伴天連正月、正月、誕生日が、年末年始に一週間置きに訪れ、年中行事の全てが集中し、
　　其の締め括りが誕生日と成れば、打ち上げ気分と、伴天連正月迄、何の愉しみも無いと言う憂鬱が、
　　綯い交ぜに成った様な感じだが、其れにしても、旅の空の麦酒は旨い。

　◎「ぶり丼」九〇〇円
　…そう、此の「ぶり丼」と言うメニューに惹かれて此方に決めたのだ。
　　冬の日本海の鰤に憧れが有り、此れを頂きに態々来たと言っても過言ではない。
　　然も、飲食店街を一通り巡った結果、此方のが一番、良心的な値段と言うのも有る…。
　　麦酒の旨さに唸っていると、念願の寒鰤が、丼に成って運ばれて来る。
　　御飯の上には、分厚く切られた鰤が六切れ乗っており、食欲がそそられる。
　　運ばれて来た際、食べ方に関して指南を受ける。
　　酢橘を搾り、山葵の乗った小皿に醤油を入れ、山葵を溶かして丼に掛け、
　　大根卸と良く混ぜて食べる様にと言われた様に記憶している。
　　郷に入っては郷に従え、言われた通りにしてみる。
　　さて、先ずは鰤を頂かなくては成るまい。
　　随分と厚く切られた鰤を頬張れば、まあ、如何でしょう。
　　脂がしっかりと載って、しっとりとした口当たりで、口一杯に旨味が染み渡る様。
　　思わず目を瞑り、旨さに身悶えしそうになる…。
　　只、脂が載ってこってりしていると言うだけでなく、旨さが凝縮されている。
　　搾った酢橘の爽やかな酸味と、大根卸のさっぱり感も良い味を演出して呉れている。
　　そして、醤油は地元・大野の醤油と言うが、不勉強で其れが分からない…。
　　一切れ目の鰤は勿論、麦酒の摘みとして頂く。
　　次からは御飯のおかずとして、掻っ込む様にして、味を噛み締める様に堪能する。
　　嬉しい事に、僕の大好きなとろろも付いており、此れをぶっ掛け、ヅルヅルと頂く。
　　無駄に精も付き、幸先良い出足と成りそうだ。
　　まあ、都内近郊でも頂ける店は有ろうが、こうして其の土地に来て頂くのは格別だ。
　　しっかりと腹に収め、初日の金沢観光へと出掛ける…。

～御負け～
　金沢駅の鼓門。
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