…一月七日。
誕生日の此の日から、二泊三日で金沢へ旅行に出掛ける。
雪の金沢は空気がピーンと張り詰めているも、風が無い分、然程の寒さは無く、
初日は兼六園、金沢城、ひがし茶屋街を巡り、宿へと帰り、一休みする。
まあ、雪なので靴はビチョビチョだが…。
晩御飯は、大して目出度くも無い三十五回目の誕生日だが、折角、金沢に来たのだから、
豪勢に蟹でも穿ってみようと、予め下調べし、予約をしていた此方へ御邪魔する。
◎「生ビール」六三〇円
…個室の座敷席に通されると、すっかり宴の準備が整えられている。
掘り炬燵式の席に腰を下ろし、先ずは呑み物を発注する。
何は無くても、麦酒と決まっているので、昼間に続いて麦酒をば…。
御上品に、ジョッキではなく気持ち大きめのグラスと言った感じだが、
中身は正真正銘の麦酒なので、此方も聊か御上品に味わって頂く。
身内からは何の連絡も無い鼻摘み者だが、こうして生きている事に感謝してみよう…。
誕生日の此の日から、二泊三日で金沢へ旅行に出掛ける。
雪の金沢は空気がピーンと張り詰めているも、風が無い分、然程の寒さは無く、
初日は兼六園、金沢城、ひがし茶屋街を巡り、宿へと帰り、一休みする。
まあ、雪なので靴はビチョビチョだが…。
晩御飯は、大して目出度くも無い三十五回目の誕生日だが、折角、金沢に来たのだから、
豪勢に蟹でも穿ってみようと、予め下調べし、予約をしていた此方へ御邪魔する。
◎「生ビール」六三〇円
…個室の座敷席に通されると、すっかり宴の準備が整えられている。
掘り炬燵式の席に腰を下ろし、先ずは呑み物を発注する。
何は無くても、麦酒と決まっているので、昼間に続いて麦酒をば…。
御上品に、ジョッキではなく気持ち大きめのグラスと言った感じだが、
中身は正真正銘の麦酒なので、此方も聊か御上品に味わって頂く。
身内からは何の連絡も無い鼻摘み者だが、こうして生きている事に感謝してみよう…。
○「御付き出し」
…先ずは、酒の御通しの様な感じで、付き出しが用意されている。
此の日は膾で、上にイクラがあしらわれており、彩が綺麗だ。
勿論、野菜嫌いなので、こうした物を普段は率先して頂かないが、此の日は別。
酸っぱい大根だなと思いつつも、イクラに免じて麦酒で流し込む。
○「前菜」
…続いて、前菜が置かれており、「八寸」という物だと説明を頂戴する。
何だか、正月の御節料理の様な感じだが、此の日はギリギリ松の内なので良かろう。
鮟鱇肝、紅白しん薯、大根の田楽、数の子、金柑、田作り。
八寸とは、八品入っているのかと思いきや、二十四センチメートル四方、
即ち、八寸の器に盛り付ける料理の事を言うらしい…。
○「かにの花咲き造里」
…御上品な感じに戸惑いつつも、普段、食べ慣れない料理を頂き、
さあ、主役の蟹の登場と相成る。
先ずは、蟹脚の御造りと御紹介に預かる。
蟹に限らず、生で頂ける物は、生で頂いた方が旨い。
蟹の脚を持ち、山葵を溶かした醤油に浸し、口を大きく開いて頂く。
生の蟹の冷たく、トロッとした蕩ける食感を感じ、引っ張る様にして身を削ぎ取る。
何とも言えない甘味が口の中でトローッと拡がり、金沢に来た事を実感する。
○「かに鍋」
…初めから配置されている鍋の固形燃料に火が点けられ、出来上がりを待つ。
温泉旅館にでも来た様な気分だ…。
蟹の色が紅く変色して来たら食べ頃と言うので、其の教えを忠実に遵守する。
鍋のつゆは、柚子が効いたあっさり目の物で、つけ麺のスープ割りの様な感じがしなくも無い。
蟹は、専用の金属製の耳掻きの様な棒で、身を穿り乍ら頂く。
生の蟹も良いが、鍋に入った蟹なんて、何年振りだろうか。
つゆの味が非常に宜しいので、全て飲み干してしまう。
具は他に、椎茸、白菜、春菊、葱、マロニーさん。
○「焼きがに」
…続いては、火鉢の様な物が運び込まれ、其の上には無残な姿の蟹が。
手足をバッキバキに折られ、仕舞いには、脳味噌迄曝け出され、炭火の上で焼かれている。
まあ此れも、食物連鎖の掟だから致し方有るまい…。
蟹の臨終を弔い、美味しく頂いてやる事こそが何よりの供養なので、早速、頂く。
茹でた蟹は馴染みが有るが、焼いた蟹は初めてかも知れない。
件の蟹穿り棒を駆使し、黙々と蟹の身を穿り出す事だけに専念する。
表面は香ばしいのだが、中は半生加減で、甘味も強くなるのか旨い。
又、贅沢にも蟹味噌が甲羅一杯に盛られ、箸で突いてチマチマ頂く。
○「かに足天麩羅」
…今度は揚げ物が遣って来る。
海老の天麩羅は数多く食べた事は有れど、蟹の天麩羅はそうそう無かろう。
精精、蟹蒲鉾の天麩羅が関のマウンテンだ…。
天つゆに大根卸と卸生姜を溶かし、どっぷりと浸して齧り付く。
サクッと軽い衣の歯触りを感じ、更に噛み締めれば、中からは甘い蟹の身が。
海老とは全く違った、甲殻類の素敵な天麩羅。
日本人で良かったと感じ乍ら、残った天つゆは残らず飲み干す。
○「茹でがに」
…そろそろ終盤に向かい、蟹の中でも一番馴染みの有る茹で蟹の登場。
正月に実家に帰った折、冷凍物の蟹を頂いたが、そんな物と比べるのが失礼に当たる。
何せ、蟹の脚には、北陸で獲れた蟹であると証明する素敵な青いアンクレットをしている。
此れ又、件の蟹穿り棒を持ち、余りに穿り過ぎて手を疲労しつつ、黙々と穿る。
穿った身を箸で摘み、一緒に出された酢に浸けて頂くと、最も勝手知ったる味なので、
妙に安心感と言うか、落ち着きが有り、美味しく頂ける。
関東地方で頂く粗悪な物とは訳が違い、身がふっくらと柔らかく、甘さも十分に有る。
蟹味噌もしっかり付いており、とても幸せな気分に満たされる…。
○「かに雑炊」
…名残惜しいが、〆の御飯物が運ばれて来る。
折りしも七草粥の日だが、胃袋に優しそうな蟹雑炊。
雑炊なんて、独り者には縁が無く、風邪で寝込んだ時のレトルトの御粥位なものだ。
味付けは先程の蟹鍋のつゆと同じで、柚子の風味がし、良い出汁が効いている。
胃袋が温まり、〆を飾るに相応しい、優しい一杯だ。
○「デザート」
…最後は、発熱しないと食べられないメロンの登場。
尤も、僕は普段、宗教上の理由で果物を食べないので縁が無い。
と言っても、無宗教ですが何か…。
メロンなんて何年振りだろうと、赤い果肉を頬張る。
久し振りに、誕生日の晩に外食した感じで、然も、見知らぬ土地で蟹を頂けるなんぞ、
非日常の世界に身を置くのも、日頃の憂さを晴らすには良いのかも知れない…。
非日常の世界に身を置くのも、日頃の憂さを晴らすには良いのかも知れない…。
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※2011年1月10日時点の情報です。
ID:0004264252
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