続・ROCK‘N’ROLL退屈男

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「しゃぶしゃぶ ごまだれ屋」【川口】


 …木曜日。
  一〇連休の黄金週間七日目も、家で至って自堕落に過ごし、もう夕刻だ。
  東京讀賣巨人軍は負けるし、連休も終盤だし、こんな歳だし、親も歳だし、貴方しか居ないし…、
  大黒摩季の「ら・ら・ら」からの抜粋は兎も角、晩は外に出てみる。
  其の昔、日進に「和彩楽酒 かもん」、宮原に移って「和匠喜酒 かもん」と言う店が在り、
  日進時分には週に数度、宮原に移ってからも最低でも週に一度は必ず訪店していた店で、
  諸般の事情で、今年一月七日、縁起の悪い事に、僕の誕生日を以って目出度く閉店してしまう。
  其のマスターが、再度、宮原近辺で開店するべく、物件探しをしていたが、
  物件自体が少ない場所柄、諦め、今度、川口に在る此方で料理人として勤め始める。
  其の連絡を受け、一月下旬に一緒に呑んで以来なので、馬鹿面を見に出掛けてみる。
  川口の超一流百貨店「そごう」の裏手の路地に在る此方は、しゃぶしゃぶを売りにしている様だ。
  念の為、誤解の無い様に付け加えておくが、従業員は全員、(多分)ちゃんと着衣している。
  其の手の店に行った事は無いが、或る意味、本物の「肉」、生の「肉」、肉襞を見乍ら、
  しゃぶしゃぶを食べると言うのは、難しい気がして成らないのだが。
  第一、目の前にそんな「肉」がうろちょろしてちゃ、気が散ってしゃぶしゃぶどころじゃ無いし、
  下手をすると、興奮して自分の「胡麻ダレ」が出てしまう…。
  そんな猥談は兎も角、建物の二階へと階段を昇り、店内に入ると、相変わらずの顔が居る。
  「相変わらず馬鹿か?」と何時もの挨拶をし、テーブル席に着席する…。

 ◎「サッポロ生ビール」五八〇円
 …先ずは、何は無くても、麦酒を発注。
  店こそ初めて訪れるが、知った顔が居るので、何だか全くの初めてと言う気がしない。
  此の日の口開けに麦酒をグイッと呷り、一〇連休の七日目の打ち上げを開始する。
  店内は、小上がりは六人席と四人席、テーブル席は四人掛けと、二人掛けが二つ。
  小ぢんまりとしているが、綺麗にされており、ゴキブリが出た「かもん」とは大違いだ。
  客の目の前で殺虫剤でポアする店って…。

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 ◎「まぐろブツ」六八〇円
 …此方は先述の通り、しゃぶしゃぶや鋤焼を主に提供する店なのだが、
  流石に、しゃぶしゃぶなんて石油王か皇室関係でもないと頂けないので、普通に摘みを頂く。
  マスターが加わって以降、前の「かもん」の様な感じにするべく、魚や、一品料理も加え、
  メニューも刷新した様で、今後は屋号も変更し、しゃぶしゃぶだけに拘らない店にする様だ。
  と言う訳で、矢張り、酒を頂く時の初っ端は魚が有り難い。
  此の日の御薦めが記された手書きのメニューの中から、鮪のぶつを発注。
  前の「かもん」では何て事無い普通の感覚だが、此方で鮪を発注するのは些かの抵抗が有る…。
  ツマを切るのが面倒臭いので、若布だけで我慢しろ等と、客を客とも思わない悪態にもめげず、
  鮪が出て来るのを大人しく待ち、しゃぶしゃぶ屋で鮪の刺身を頂いてみる。
  中トロの脂の載った部位で、口内でトロッと蕩け、酒の摘みとしては最高だ。
  ちゃんとした鮪の刺身より、ぶつの方が酒呑みとしては雰囲気が出て好きだ。

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 ◎「和牛ビーフシチュー」九八〇円
 …ブルジョワジーじゃないのでしゃぶしゃぶは頂けなくても、肉は頂いてみたい。
  「かもん」でも何度も頂いたデミグラスソースメニューに、此方の肉が加わると言う、
  何とも蠱惑的な感じに魅せられ、「和牛ビーフシチュー」を発注。
  マスター曰く、端肉の部位だと言うが、其れを感じさせない位にトロットロで柔らかく、
  木製の匙で簡単に切る事が出来る程で、箸でチマチマ千切り乍ら酒を呑むには持って来い。
  腕白中年は如何も、デミグラスソースには滅法弱い様だ。
  脇に添えられた仏蘭西麺麭に乗せて頂くのも一興。

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 ◎「チーズとアンチョビのパン」五八〇円
 …メニューを眺め、チーズフェチとしては頂いておきたいのが此れ。
  仏蘭西麺麭に、鰯の塩漬け発酵オリーブ油漬け、チーズを乗せて焼いた物。
  子供の頃、「アンチョビ」と聞いて、活躍しなさそうな助っ人外国人選手かと思ったが、
  今と成ってはちゃんと学習して知っている…。
  アンチョビの塩気と、チーズの塩気、高血圧患者には堪らない塩気。
  此れは葡萄酒が呑みたくなってしまうが、貴族ではないので止す…。

 一頻り、麦酒二杯、緑茶ハイ二杯、濁り梅酒を頂戴し、時刻も二十二時に迫ろうと言うので、
 又の機会を御贔屓に、取り敢えず、今回は顔見世と言う事で退散する。

 因みに、此の日の御薦めメニューは…、
 ・「まぐろぬた和え」七三〇円
 ・「まぐろのユッケ」八八〇円
 ・「ホタテもと焼き」八八〇円
 ・「ごぼう磯辺揚げ天」六五〇円
 ・「さつま揚げ串 タコ入り」五三〇円
 ・「パストラミ鴨ロース」六三〇円
 ・「味噌鴨ロース」六八〇円
 ・「やっこのキノコあんかけ」五六〇円
 ・「国産牛のカツレツ和風きのこあん」九八〇円
 ・「ベリーベリーレアチーズケーキ」四二〇円
 ・「紅白道明寺」四二〇円
 ・「抹茶ぷりん」三八〇円