◆「osteria Buco」【宮原】
…先週金曜日。
いやいや今週も、恥ずかし乍ら還って参りました…。
連休を宛がって貰えず、今週は今日、木曜日だけの休日。
仕事の忙しさは、極めて束の間の閑散期を迎えているが、心身はきつい。
此の先の事、将来の事を考えたりすると、生きる自信、気力が失せる…。
そう成ると、現実逃避に余念が無い。
先週金曜日の休日は、久し振りに御近所様と晩御飯を御一緒する。
こちとら、如何せん、土日に休めない最下層の人間。
土日休みのブルジョワジー様を、平日に誘って呑みに行くなんぞ御法度で、
江戸時代ならば、市中引き回しの上、打ち首獄門だ。
なので、誘われないと無理で、此方から誘うなんて事は出来ない。
「一番鶏」の系列で、過去に何度か訪れている。
◎「生ビール(中)」六四八円
…十九時に到着すれば、既に御近所様が待機。
ブルジョワジー様を待たせるとは、斬り捨て御免されても文句は言えない…。
何とか、命乞いをし、斬り捨てられる事も無く、酒を発注。
此の日も昼間っから酒を呷ったが、其れも抜け、改めて仕切り直し。
グイッと呷れば、湿っぽい雨の日だが爽快感が齎される。
御通しは赤茄子味の野菜の煮込みと、じゃが芋を擂り潰した物。
◎「チーズたっぷりのシーザーサラダ」七四五円
…先ずは、御近所様に発注を任せ、最下層の人間は黙って、大人しく、待て。
そして、最初に遣って来たのは、生野菜。
宗教上の理由で、野菜は戒律で厳しく禁じられているが、
シーザーサラダと言うのはズーチーのコクが有り、テレレも好きだ。
パルメザンチーズをゲッティーの様に、真っ白に成る位に掛けて欲しい程。
◎「モッツァレラチーズの生ハム包み揚げ」七四五円
…続いても、御近所様に御発注頂いた物を、有り難く分けて頂く。
名前から察するに、モッツァレラチーズを生ハムで包み、揚げたのだな。
まあ、其の儘の解説で申し訳無い…。
矢張り、ムーハーとズーチーの組み合わせは鉄板だ。
カリッと軽い衣の歯触りで、中からはハムの確りとした歯応えが感じられ、
其の隙間から、モッツァレラチーズが蕩けて出て来るのが良いわぃ。
◎「カルパッチョ(三種盛り)」一〇六九円
…最下層の分際で、我が儘を言わせて頂き、発注をさせて頂く。
今考えると、随分と出過ぎた真似をしてしまったものだ…。
卓上の手書きの今月の御薦めメニューの中から、生魚を発注。
如何しても、昼間に寿司を頂いても、酒の席には生魚は居て欲しい。
帆立貝、鮭、目鯛の三種類が有るが、贅沢にも、三種盛りで発注。
橄欖油塗れの刺身と言うのも好きで、帆立貝は甘味が優しく、
鮭は濃厚な味わい、目鯛は上品な旨味で、酒を進ませる。
◎「BUCO風の生春巻き」七五六円
…再度、御近所様に発注権限を移管し、黙って大人しくする。
伊太利亜料理屋だが、生春巻きとな。
生春巻き自体、何処の国の起源なのかは知らないが、まあ良い。
前述の通り、宗教上の理由で野菜が食べられないが、頂いてみる。
テレレは唐辛子を使用した辛目の物で、酸味も効いている。
具の野菜の中に、癖の有る葉っぱが有り、今流行りの合法ハーブか。
◎「ロッカ デッレ マチエ ルビッツオ ビアンコ 」三〇二四円
…さて、麦酒を二杯頂いた所で、酒を葡萄酒に替えよう。
と言っても、葡萄酒の味なんぞ分からず、何を呑んでも同じで、
元来、酒に高い金を掛けない主義なので、御近所様に従う。
能書きには「黄色がかった麦藁色。山査子やアカシアのアロマを持った、
フルーテーで華やかな香り。フレッシュで滑らかな辛口」とな。
横文字ばかりで、小父さんは分からないナァ。
トレンデーのヤングの為のスペシャルコーデネートのデーシーブランドの
プレタポルテったって、如何言うんだか、さっぱり分かんねぇなあ…。
◎「じゃが芋のフライ~ローズマリーとにんにくの香り~」五二九円
…又しても、御近所様に発注して頂く。
おおっ、揚げじゃが芋と言うのは、どんな酒にでも合うな。
日本酒は駄目か…。
ローズマリーとは何ぞや。
フンヅマリなら知っているが、此れも合法ハーブか。
地味に大蒜も摂取出来、ホクホクとしたじゃが芋は葡萄酒を進ませる。
◎「生カキ(2ケ)」七四五円
…無礼を御赦し頂き、生牡蠣を発注。
貝フェチなので、生で頂ける牡蠣が有ると成れば、我慢出来ないのだよ。
冬場の小さい真牡蠣も良いが、夏場の岩牡蠣は食べ出が有る。
ぷっくりとした身は嫌らしさを兼ね備え、心の中で卑猥な事を考える。
口内に一気に含めば、冷たく、プリッとした食感が堪らず、
磯の香りに支配され、気分は阿字ヶ浦…。
牡蠣を死ぬ程に食べて、駄目に成って、天に召されたい。
◎「魚介とじゃが芋のラヴィオリ~枝豆のクリームソース~」一〇六九円
…もう、僕は酔って現実逃避さえ出来れば良いので、何でも良い。
出て来た物を黙って美味しく頂ければ幸せだ…。
そろそろ、炭水化物に移行し始めた様だ。
御薦めのメニューの中から出て来たのが此方。
酔っ払った僕の脳内では、「冬のラヴィオリ」がずっと流れている。
大滝詠一師匠の急逝から未だに立ち直れないで居る…。
あっ、正しくは、リヴィエラね。
芋と豆を擂り潰したテレレに、伊太利亜風の一口餃子が入っている。
何だか、表現が急に雑に成ったな…。
…嗚呼、白葡萄酒も呑んだのね。
そろそろ、記憶が曖昧に成っているな…。
何だか、爽やかだった様な、辛口だった様な、そんな感じ。
どんな感じだよ!と言う突っ込みは、一切受け付けられないので悪しからず。
◎「ピッツァ カプリチョーザ」一四〇四円
…そろそろ一行は、〆に向かったらしい。
ザーピーを食べたかった記憶は有るが、果たして、何を食べたのやら…。
何か、「カプリチョーザ」と言う単語が出ていた気もする。
と言う訳で、此のザーピーは、カプリチョーザと言う事にしておこう。
第一、カプリが何で、チョーザが何かも知らないよ、吾輩は。
薄いパリパリの生地に、ズーチーやら、玉子やら、茸が乗っている。
其れは写真からも見て取れる。
味もぼんやりとしか覚えていないが、赤茄子味がしなかったのは確か。
如何やら、僕はゲリマル、もとい、マルゲリが好きな様だ。
◎「カキとホウレン草のピリ辛トマトソースパスタ」一四〇四円
…ゲッティーは覚えているよ。
何せ、御薦めメニューの中から、牡蠣が入っているのを見付け、
食べてみたくて発注したのだから。
と言っても、細かな味の仔細迄は残念乍ら、酔っ払って分からないわね。
辛かったのは確か。
「ピリ辛」と言う位なので、辛かったんでしょう、恐らく。
牡蠣もちゃんと入っている。
「カキ」と謳っているんだから、入っていたんでしょう、恐らく。
嗚呼、とことん、駄目人間だね。
社会に出ちゃいけないよ、こんなのが…。
と言う訳で、土日休みのブルジョワジー様。
平日休みのカースト最下層の者で宜しければ、御誘い御待ち致しております。