◆「酔笑苑」【本厚木】
…日曜日。
気付けば、今週も地味に始まってしまったね…。
此の日、日曜日は、半休と言う事で、四時間ばかり労働する。
正午から十六時半迄、みっちりと、齷齪と。
陽が暮れる前に上がれる事は滅多に無いので、事前に予定を立てていた。
神奈川県在住の同僚の方に声を掛け、すっかり御無沙汰なので呑もうとね。
店も何と無く調べておき、話し合いの結果、折角、厚木なのだから、
シロコロホルモンをちゃんと頂いてみようと、評判の良さげな此方へ。
地元では名の知れた有名店の様で、店内は煙と人熱れで凄い事に成っている。
「予約されてますか?」と訊かれる程、人気店なのだろう。
席の空きを確認するからと、暫し、待機させられる。
程無くして、厳密には店内ではないのだが、テーブル席が有ると言う。
実際に見て欲しいと言う事で、店の脇から裏手に廻る。
すると、隣の店の勝手口が目と鼻の先の軒下に、テーブルと椅子が。
丸で、東南亜細亜の飲食店の様な格好で、仄暗く、風通しの良い席が有る。
夜風に吹かれて呑むのは好きなので、全く問題無いと、すんなり受け容れる。
着席し、七輪も運ばれて来て、宴の開始だ。
◎「生ビール(中)」五一〇円
…先ずは、何は無くても、取りも直さず、麦酒が無いと始まらない。
「大」も有ると言うので、一瞬、惹かれたが、遠方なので自重する…。
大人しく、「中」で乾杯し、グイッと呷る。
高々、四時間半しか労働していないが、五臓六腑に染み渡る旨さ。
御通しは生のベツキャー。
◎「シロコロ」六六〇円*二人前
…さて、纏めてドヴァっと、臓物を発注してしまおう。
主役は取り敢えず、B一グランプリで優勝した事の有る此の内容物。
「シロ」、即ち、豚の大腸の中でも、特に脂の詰まっている部位。
此れを人間で考えたら、こんなに大腸に脂が付着していたら死ぬね…。
七輪の網の上で炙れば、ぷっくりと膨らみ、中から脂身がプイッと飛び出す。
丸で、痔の人が、辛い物を食べた後、核が飛び出すかの様…。
プルンとして、脂が諄くなく、コラーゲンたっぷりで旨いな。
本場で頂くと言う事に、其れなりの価値が有ろう。
◎「カシラ」四八〇円
…豚肉と言えば、埼玉県民としたら、東松山が在る関係上、外せない。
東松山で「やきとり」と言えば、豚のカシラ肉を用いた「やきとん」の事。
其れを食べさせる大宮の「かしら屋」が好きで好きで仕方が無い。
此方の「カシラ」はと言うと、「かしら屋」の様な軟らかさと、
適度な噛み締め甲斐の有る歯応えと言うよりは、やや硬めか。
ブリンっとした弾力が感じられる。
◎「ホッピー」四二〇円
…麦酒は一杯で止し、酒はホッピーに替えてみよう。
ホルモンと来れば、ピーホツだ。
驚いたのが、「ナカ」と「ソト」、別々で来るのかと思いきや、
既に一杯分が完成されたジョッキで提供される。
「ナカ」と「ソト」の配分を自分で調整し乍ら呑むのも愉しみなのにな…。
◎「牛上ハラミ」一四八〇円
…此方は豚だけでなく、牛も取り揃えているのが良い。
牛肉に於いて、カルビよりも、ロースよりも好きなのがハラミだ。
値が張るので、一一二〇円の「牛ハラミ」を発注したのだが、
品切れなのか、「牛上ハラミ」、「牛特上ハラミ」しか無いと言う。
厚さ五ミリメートルは優に有ろうと言う存在感に心躍る。
サッと、軽く焦げ目が付く程度で頬張る。
夥しい量の脂が溢れ出し、旨さ爆発!
◎「アミレバ」六九〇円
…此方の名物と思しきメニューを、事前に予習していた。
「アミレバ」と言う代物。
何でも、新鮮な豚レバーを網脂で巻いたと言う、此方独自の物らしい。
早速、期待を胸に炙り、火が通ったで有ろう頃合いで喰らい付く。
中の豚レバーは半生、否、殆ど生の状態だが、新鮮だからこそ為せる業。
プリップリのトゥルントゥルンで、此れは素敵だ。
こんな形状の菓子、「ブルボン」から出てなかったっけか…。
◎「ハラミ刺し」七八〇円
…おっ、生肉も置いてあるわぃ。
「牛刺」、「牛タン刺」、「センマイ刺」、「ガツ刺」等が有るが、
矢張り、「ハラミ刺」と言うのに魅せられてしまう。
此れ又、結構な分厚さで、赤々としてヘモグロビンが良い色をしている。
又、さしの入りも良く、見た目からして美しい。
ひんやりとした食感で、むっちりとした弾力と軟らかさが有る。
生で頂ける物は、生で頂くべきであると、つくづく思う。
◎「和牛カルビ」九二〇円
…牛肉の中から、定番のカルビを発注。
豚トロの様な切り方で登場し、揉みダレが染み込んでいる。
此れに関しては、正直、特筆すべき点は無いか…。
◎「牛タン」一五八〇円
…続いても、牛肉の中からベロを発注。
偶には、牛とデープキッスをしておかないと。
厚味は其処其処良いのだが、此れも少々、硬さが目に付いてしまう。
厚いのに軟らかい、此れが牛タンの醍醐味、旨さ、驚きでも有るのだが。
◎「アミレバスペシャル」一〇〇〇円
…先程の「アミレバ」が想像以上に美味しく、気に成ってしまう。
何と、メニューには「アミレバスペシャル」と言う、一〇〇〇円の物が…。
矢も楯も堪らず、此れは発注せざるを得んでしょう。
見た感じは、通常の「アミレバ」と変わりは無い。
いざ、炙って、喰らい付いたら吃驚。
大量の擂り卸し大蒜が巻き込まれており、口内が大・大蒜祭り。
前の晩、同僚の方々とギスカンを炙り、二次会で串揚げを喰らい、
三次会で「ジャンクガレッジ」で「ラーメン」と全増しで頂いたばかりだ。
未だ、大蒜が抜け切っていないのに、迎え大蒜、追い大蒜とは…。
旨いじゃないか!
◎「アカ」三九〇円+「コブ芯」四八〇円
…メニューの中から、珍しい物を発注してみよう。
店員氏に部位を訊いてみる。
「アカ」と言うのが気に成り、伺ったのだが、脾臓だったっけかな…。
レバーに似ていて、味は酔っ払ってたので、多分、旨かった。
「コブ芯」…だった気がするんだけどナァ…。
◎「しびれ」四四〇円
…「しびれ」は膵臓だったかしら。
湯掻いてあり、モソモソした鮟鱇肝の様な感じ。
◎「ピストン」四八〇円
…もう、記憶も曖昧。
心臓付近の血管みたいよ。
ホツピーを何杯頂いたか知らないが、何とか帰れた駄目中年…。