◎「ラーメン」八〇〇円
…水曜日。
九月も此の日で終わろうとしている。
九月三〇日か…。
其の昔、此の日が誕生日の方と付き合い、別れ、随分と苦しんだナァ~。
未だに、其の亡霊に心が締め付けられそうに成るので、恐らく、
一生、心の何処かで苦しみ続けるのだろうな。
あの人と僕のセピア色の傷口さえ、何時しか懐かしむ、そんな歳に成った…。
そんな感慨に耽りつつ、此の日も、午後からの外出を前に、
昼御飯は池袋で済ませようと、前々日に続いて、池袋の街を彷徨う。
一〇月に成っていないので、「らーめん つけめん 鶏の穴」の限定麺は未だだ。
自然と足が向き、無難に旨い物を頂こうと言う本能が働く様だ。
と言う訳で、此方の木戸をガラッと開け、中に入り、券売機と対峙する。
「東池袋大勝軒」の直系、直営店なので、勿論、「もりそば」が有名、
と言うのは、あたりきしゃりき車引きなのだが、如何言う訳だか、
此方では「ラーメン」に惹かれてしまい、専ら此ればかり。
今回も御多分に洩れず、「ラーメン」の食券を購入し、カウンター席に着席。
冷水を呷り、厨房奥からの店主の大きな声を耳で確認し、出来上がりを待つ。
殆どの客が、時間の掛かる「もりそば」を発注している様で、
時間の掛からない「ラーメン」は、後から入店しても先に出て来るのが助かる。
数名飛ばして、僕の「ラーメン」が配膳され、一足御先に取り掛かる。
先ずは、蓮華でプースーから啜れば、とろみが僅かに感じられ、
材料がふんだんに使用され、惜しみ無く出汁が抽出されている様で、
動物系と魚介系がヴワっと一気に押し寄せる感覚で、贅沢ささえ感じる。
表面は油層で覆われているので熱熱で、猫舌には少々厳しいが、
思わず何口も立て続けに啜ってしまう程の旨味が満ちている。
相変わらず、化学調味料の味わいがヴィンヴィン効いているが、其れも宜しい。
麺を手繰れば、真っ直ぐの中太麺で、食べ出は十二分に有ろう。
ポキッと言う歯触りで、此の腰が何とも心地好く、噛んで愉しい麺だ。
縮れが無い分、プースーとの絡み、持ち上げは然程良くないと言う評価だが、
ツルツルし過ぎない分、個人的には、麺が或る程度吸って、程好いとは思うが。
具に目を転じれば、麺麻の量が多いのは、毎度嬉しいわね。
麺麻をポリポリ、麺をスルスル、プースーをヅヅっと、其の繰り返しで行ける。
叉焼は腿肉だろうか、適度な噛み応えと軟らかさを持ち合わせて居り、
肩ロース肉も悪くは無いが、パサつきの少なさを思うと、此方の方が好みか。
たっぷりの葱や、海苔、鳴門も地味だが良い味を出しており、
一ヶ月半振りに頂いたが、其れなりに満足度は高く、外さない味だ。