◆「うな鐵」【大宮】
…昨日。
金曜日にもっきりと心を折られてしまったので、折角の週末の休日と言えど、
中々、気持ちが浮上する事が難しく、何処か、安らいでいない心持ちだ…。
然し、昨朝は吐き気や嘔吐きも無く、七時には起き出し、健やかな朝を迎える。
気分は低く垂れ込めた暗雲の様だが、努めて、休日を満喫しようと試みる。
午前中は極めて自堕落に過ごし、十一時前に買い物がてら外に出る。
一件用事を済ませ、さて、十二時半を廻り、昼御飯だ。
此の暑さなので、さっぱりと、冷たい饂飩でも啜ろうとしようと思い立ち、
大宮の西の外れに在る「手打ちうどん 袋屋」に行くも、人気店故、待ち客多数。
とっとと諦め、大宮駅周辺へと行き、改めて、多くの選択肢の中から熟考しよう。
食欲が落ちているので、余り、量は要らない。
旨い物を少しだけ頂ければ良いので、奮発して、鰻と洒落込もう。
カースト最下層なので、畏まらずに頂ける、庶民的な此方に御邪魔する。
近くに劇場が在るので、大宮では偶にこう言う場面に遭遇する…。
先ずは着席し、折角の鰻なので、吞みたいのは山々だが、自動車なのと、
元より、酒を断たないといけない状態なので、麦茶で我慢…。
ホッピーの外でも良いのだが、気分的には此れで十分。
…折角なので、摘みに肝焼きを発注。
「ひれ焼」、「ばら身」、「レバ焼」、「串巻き」、「短尺」、「かぶと」と、
他にも魅惑的な鰻の串焼きが取り揃えられているのが良い。
鰻の内臓を串に刺して焼いた物で、プリプリ、コリコリとした弾力が有り、
ほろ苦さが大人の味わいで、タレの甘辛さと絶妙に混ざり合う。
大人の味わいだな。
…さて、御目当ての鰻だ。
普通ならば、僕の様な賤民は、一二九〇円の「うな丼」でさえ憚られるが、
断酒の所為で、すっかり呑みに出歩く事も無くなり、修道女の様な暮らしで、
酒に金を使う事も無くなったので、食事位は贅沢しても良かろう。
とは言え、勇気の居る発注ではあるが…。
然し、高いだけあって、鰻は矢張り旨いな。
ふっくら、ふんわりとして、口の中でいとも簡単に蕩けて行く。
年に一度、頂けるか如何かの鰻なので、じっくりと味わいのだが、
旨いので箸が進んでしまい、減りが早いので参ってしまう。
卓上の山椒をたっぷと振り掛け、香りを愉しみ、ヒリリとした辛味も爽やかだ。
鰻を頂いていると、本当、日本人に生まれて良かったと心底思う。
御香香と肝吸いの味も大変宜しく、束の間の至福の時を堪能する。
美味しい時間と言うのは、あっと言う間に過ぎ去ってしまうが。
食べ終えれば、早くもサザエさん症候群を発症する社会不適合者…。
