我が敬愛する大滝詠一師匠が亡くなって、今年の年末で五年。
其の師匠が敬愛し、「熱き心に」を提供したのが御存知、マイトガイ、小林 旭。
其のアキラも、今年の十一月三日で八十一歳。
言い方は悪いが、観られる内に観ておこうと、生で「熱き心に」を聴く為に、
想像通り、会場はと言うと、墓地の売り出しか、健康器具の催眠商法に集まった様な、
後期高齢者が佃煮にする程に居り、老朽化で建て替えが決まった此の古い施設では、
老人に過酷な試練を与えるので、誰一人、支え無しに急な階段を昇降出来る客は無く、
膝の痛みを押して、肘掛けを伝い乍らヨッコラセ。
一六七五席の会場は加齢臭や線香、防虫剤や入れ歯安定剤の臭いが充満し、
恐山の様相で、正直、此の会場内で僕が最年少なのではと思う程。
前から十四列目の良い席で、アキラの御尊顔も確りと拝する。
●「小林 旭プレミアムコンサート」@サンシティ越谷市民ホール
1.翔歌
2.素晴らしき哉人生
3.あれから
4.惚れた女が死んだ夜は
5.雪散華
6.昭和恋唄
7.北帰行
8.さすらい
9.ギターを持った渡り鳥
10.ダイナマイトが百五十屯
11.アキラのソーラン節
12.アキラのデカンショ
13.アキラのツーレロ節
14.アキラのダンチョネ節
15.アキラのズンドコ節
16.自動車ショー歌
17.昔の名前で出ています
18.ついて来るかい
19.北へ
20.駅
21.星屑ホテル~夢去りぬ~
22.風の旅人
23.人生思い出橋
24.熱き心に
全身真っ白の舞台衣装、真っ白の琺瑯の靴、襟の大きな鮮やかな紫の襯衣で登場。
随分と恰幅が良くなったが、矢張り、往年のスタァは違うわぃ。
素っ頓狂と言われた高音の声は衰え知らずで、存分にアキラ節を堪能。
緞帳が上がり、二〇〇四年のシングル盤、作詞・阿久 悠、作曲・宇崎竜童の「翔歌」。
一曲歌っては喋りと言う形で進行し、デヴューからを振り返る回顧録的な内容。
御嬢の話題が出ての「惚れた女が死んだ夜は」はジンと来る。
そして、「ダイナマイトが百五十屯」からは、背後の楽器隊が立ち上がり、
木管、金管楽器が響き渡り、調教スカトロダイスキオーケストラ、もとい、
東京スカパラダイスオーケストラとの「アキラのジーンときちゃうぜ 」を思い出す。
其処からは、昭和三十五年以降の「アキラの~」と冠したアキラ節全開。
船村 徹や遠藤 実等の名曲が甦り、矢張り、アキラは格好良いナァ。
「自動車ショー歌」では背後の映写幕に往年の名車が、歌詞の順に映し出される演出。
日活の倒産や、多額の借金と言う暗黒時代から復活した「昔の名前で出ています」、
此れには会場からも喝采で、自身最大の売り上げ枚数を誇るシングルだけある。
そして最後は、何はさて置き、「熱き心に」で締め括る。
生で大瀧詠一師匠作曲の名曲が聴けるとは、長生きはしてみるものだ。
盛大に転調した後の大サビの「オーロラの~」では流石に鳥肌が立ち、興奮も最高潮。
閉演後は、急な階段に難儀する後期高齢者に混じって外に出る初期高齢者…。