◆「煮込うどん 山本屋本店 岐阜柳ヶ瀬店」【名鉄岐阜】
…土曜日。
此の三連休だけを生き甲斐に暮らし、そして漕ぎ着けた土曜日。
僕の数少ない趣味である「ニッポン城めぐり」の城郭攻略は勿論だが、
三河、尾張、美濃には有能な武将が多いので、登用の旅に出ようと試みる。
五時に起床し、六時二〇分に出立、東京駅七時四十七分発「のぞみ」三〇一号、
余りの人の多さに吐き気を催しそうな中、在来線に乗り換え、先ずは美濃國、
岐阜へと向かうべく、九時五〇分発の岐阜駅行きの普通列車で木曽川を越える。
到着後は乗り合い大型自動車で金華山、岐阜城を見学し、随分と疲労したので、
正午に柳ヶ瀬へと戻り、さあ、昼御飯だ。
「柳ヶ瀬ブルース」で御馴染みの夜の街で頂くのは、名古屋名物の味噌煮込み饂飩。
味噌煮込み饂飩と言えば、此方を置いて他無い。
街の大きい県庁所在地の割りに人が少なくて非常に助かり、すんなりと入店。
◎「瓶ビール(スーパードライ)」七一五円
…好きな席にどうぞと、選びたい放題の食卓席にヨッコイショーイチ。
研修中の名札の若い女中さんから献立表を受け取り、暫し考えて発注。
先ずは暑気払いにと、瓶麦酒を手酌で飲る。
稲葉山登山をして足腰が疲労したので、酒の力で筋肉を解さないといけない。
グイっと呷れば、良く冷えた黄金色のプリン体が、清涼感たっぷりで心地好い。
摘みは味噌煮込み饂飩を発注したので、御香香が付き、胡瓜、白菜、大根で繫ぐ。
◎「天ぷら入り味噌煮込うどん(ご飯・自家製漬物付)」一七九三円
…酒の当てに「名古屋コーチンネギマ」を発注するも、饂飩の方が先の御出座し。
土鍋でぐつぐつと音を立て乍ら、猫舌、暑がり泣かせの熱熱の様相…。
蓋を開ければ、八丁味噌の香ばしい薫りが湯気と共に濛々と立ち上り、
先ずは蓮華を手に取り、ルーシーから啜ろう。
如何せん、味噌煮込み饂飩童貞なので、初めて尽くしだが、もっとドロドロの、
僕の血液の様な粘度を想像していたが、意外にもサラッとしている。
そして、味噌も然る事乍ら、出汁の味わいが強めに効いていて、此れは良いわね。
鰹節専門の熟練した職人が居ると言い、日々焙乾状態が変わる鰹節を見極め、
最高の状態へ再び乾燥させ、香り高く削り上げ、其の削り立てに独自配合を施し、
出汁の包みに封じ込めると言い、鯵節や鶏ガラも含まれている様だ。
茶褐色の味噌はと言うと、此方専用に三年間じっくり醸造した地元特産の赤味噌、
白味噌の二種類の味噌に粗目糖を独自の技術で配合し、艶が出る迄、
大釜でじっくり炊き上げる「あじ味噌」と言い、甘味、辛味、酸味の均整が良い。
熱いのも忘れ、立て続けに何口も啜ってしまう。
さて、次は麺、饂飩に取り掛かろう。
噂では腰が効いていると聞いていたが、武蔵野饂飩と比べたら何だが、思いの外、
太さは無いが、噛むと確りとした腰が歯に伝わり、もっちりとした食感が旨い。
熟練した職人が季節、天候等の異なる粉の肌合いを感じ取り乍ら、
充分に吟味された小麦粉を使用して練り上げると言い、腰と張りが素晴らしい。
具には海老の天麩羅が二本入るが、衣がルーシーを吸ってふにゃふにゃに成り、
此れが十分に味が染み、衣だけで美味しく、思わず麦酒で流し込む。
具は他に蒲鉾、葱、生玉子が入り、麺を啜り終えたら、残ったルーシーに、
御飯を投入して掻っ込み、最後に玉子を一口で頬張り、口内で割るのが格別。
嗚呼、思いの外美味しく、甚く感動してしまう。
◎「名古屋コーチンネギマ(2串)」九六八円
…先に配膳された味噌煮込み饂飩にすっかり夢中で忘れていたが、
名古屋に来たなら、名古屋種を頂かないといけないわね。
高級なので、僕が出掛ける様な焼き鳥屋では出て来ない様な形状と価格…。
檸檬を搾り、先頭の葱を齧れば、シャキシャキとして、芯はトロンとして甘い。
深谷生まれでも納得。
そして、革の付着した名古屋種は、肉質が逞しく、物凄い弾力。
然し、硬いと言う感じではなく、瑞々しさを感じ、肉汁が迸る旨さ。
そんじょ其処等の鶏肉では御目に掛かれない旨さで、塩気も丁度良く絶妙。
思わず、瓶麦酒をもう一本発注したくなるのを我慢するのが苦しかった…。
~御負け~
岐阜城。