◆「鮨処 いっしん」【日進】
…火曜日。
一日だけの休日の此の日、十九時に家を出て、毎度の此方に御邪魔しようと、
ちんたら歩き出すと、不意にマスターから携帯電話に電子書簡が届く。
「今日はお休みですか?」と。
「今から伺う所です」と返すと、「お待ちしてます」と。
何だろうと、恐る恐る店に入ると、客は誰も居らず、マスターとママさんのみ。
マスターに「何ですか?」と問うと、食べる前に聞かない方が良いかも、
ショックで食欲無くなって食べられないかもと、脅しを掛けられる。
気に成って問えば、何と、今月一杯で店を閉めると言う。
余りの衝撃に、僕は絶句し、放心状態、虚脱状態。
何でかと問うと、次なる衝撃が。
マスターに肺癌が見付かったと言う。
速射砲を立て続けに受けた我が身は、現実を飲み込む事が出来ずに顔が強張る。
他人事の様に、時折笑いを混ぜつつ話して呉れるマスターの話に付いて行けない。
僕は涙が溢れそうなのを必死で堪え、話を聞き続けるしか無い…。
と言う訳で、僕の最愛の此方は今月一杯で閉店が決定し、僕は抜け殻と成る。
例によって、写真のみで御勘弁を、と言うか、此の日は御通夜みたいだった…。
◎「生ビール(中)」五八〇円
◎「ウーロンハイ」三七〇円
余りの衝撃に、食事が喉を通らず、食べ納めをしたかったのだが…。
麦酒一杯、烏龍ハイ二杯で止す。
後日談が有り、此の三日後、マスターから連絡が有り、精密検査の結果、
肺癌ではなく、別の病気である事が分かり、一安心する。
然し、店は既定通り、今月一杯で閉店との事で、淡い期待が打ち砕かれる…。