◎「チャーシューメン」九〇〇円
…金曜日。
博多二日目にして最後の晩は、「旬の鮮魚と魂の煮込み 照-TERRA-」で、
頗る旨い酒と肴を頂き、胃袋に若干の余裕を残し、夜の博多の街へ。
博多どんたくの初日とあって、街は活気付き、賑やかで人出も多い。
大宮辺りじゃ味わえない雰囲気で、全く知らない異国の様な街だが、
こうして夜も華やかな街と言うのは、熱量が感じられて好きだ。
無論、喧しかったり、不道徳な人間は論外だが…。
さて、博多最後の晩なので、〆に行ってしまおう。
結局、水炊き、もつ鍋、鶏皮焼きも頂かず、屋台にも行かなかったが、
ラーメンは最低でも二食は頂きたいと思っていたので、昼に御邪魔した、
「長浜ナンバーワン」に続き、旅籠から近い此方に目星を付けていた。
「新横浜ラーメン博物館」にも出店中で、一九六八年の創業以来、
此の「薬院本店」のみで営業している、取材拒否の名店。
然も、二十一時から午前二時半と言う営業時間なので、敷居も高い。
二十二時過ぎに到着すれば、店頭には六、七名の待ちで、人気の高さが窺える。
最後尾に接続し、十五分程で店内に通され、止まり木にヨッコイショーイチ。
此の時間の営業なので、酒は勿論、摘みに御田も用意されており、
空腹だったら大いに惹かれるが、大人しく、ラーメンのみで我慢、我慢…。
折角なので、旅の恥は掻き捨てで、「チャーシューメン」を発注。
矢張り、堪え性は備わっていない様だ…。
厨房内は男性三人体制で、うなづきトリオと同じ編成。
冷水を呷って酔い醒ましをしつつ、待つ事一〇分でラーメンの御出座し。
中々の獣臭を放ち乍ら、表面に大量の油を湛えて目の前に現れる。
うん、此りゃ、良いわね。
心の中でほくそ笑み、先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。
味自体は薄味だが、強烈な濃厚さと、豚骨の出汁がヴィンヴィン伝わって来る。
昼間の「長浜ナンバーワン」とは、全く毛色が異なり、異質な旨さだ。
専用の羽釜を使用し、大量の豚骨を贅沢に使用した豚一〇割のスープで、
高火力で長時間絶えず掻き混ぜ乍ら、髄も骨も溶ける迄、徹底的に煮出し、
旨味を濃縮した「超濃厚スープ」は臭みが無く、香ばしく、
トロっとしているのが特徴と謳い、正に、プースーが主役のラーメン。
麺はと言うと、博多ラーメンでは珍しい平打ちの極細麺で、
独特な食感が味わえ、超濃厚なスープが麺に良く絡むと言う触れ込み。
しなやかさが感じられ、モソモソ、ポキポキと言う感じは無いが、
呑んだ後でもスルスルと入って行き、ぺろりと行けそうだ。
途中、卓上に置かれた丼にこんもりと盛られた紅生姜を取り、投入。
油を爽やかにして呉れ、箸休めとしても成り立つ。
具の叉焼はむっちりとした食感で、五枚は入っていようか。
其れにしても、後から引っ切り無しに客が訪れ、毎晩の光景なのだろうな。
夜にこうして元気な店が有ると言うのは、羨ましいわぃ。
とは言え、めっきり夜遅くに外を彷徨く事も無くなったが…。
流石に、此の分厚い油層なので、プースーを飲み干す事は出来なかったが、
替え玉も我慢し、博多の最後の晩を締め括る。