◆「キッチン しま」【志賀島】
…土曜日。
木曜日からの博多の旅も、遂に、到頭、最終日の此の日。
夢の様な時間はあっと言う間に過ぎ去り、ひたひたと過酷な現実が迫り来る…。
朝は八時過ぎに旅籠を引き払い、大型乗合自動車で、一先ず博多駅へ移動。
「国営 海の中道海浜公園」に行くも、何奴も此奴も考える事は同じで、
入場券を購入するのに、炎天下で並んでいるだけでドッと疲れる始末…。
園内を巡るのに貸自転車が有ったが、其れを借りようにも、とんでもない行列で、
恐らく、借りた頃には閉園時間で日が暮れそうなので、とっとと断念。
園内には瑠璃唐草が咲いていたが、其れを写真で撮る事も無く、体力の限界、
気力も無くなり、引退したい気持ちに成り、入園から一時間弱で退園…。
言わずもがな、「漢委奴國王」の金印で有名な島で、入島して下車し、
志賀海神社を参詣し、正午前だが早目の昼餐を摂ろう。
志賀島港から少し歩いた所に、海鮮丼が有名な此方が在ると言い、現場へ急行。
…昼時で人気の店とあって、店内は混み合っているが、少し待ったものの、
程無くして食卓席に案内され、歩き疲れてヨッコイショーイチ。
女中さんの手の空いた隙を突いて、暑気払いの麦酒と肴を発注。
先に麦酒が遣って来て、手酌でグイッと呷れば、爽快な苦味が駆け抜ける。
肴はと言うと、此の混み具合なので、ヂッと只管に待つ。
三〇分後、「カンパチのゴマ刺」の御出座し。
九州特有の濃口の甘い刺身醤油も相俟って、此れは嵌りそうだ。
大分県の「りゅうきゅう」も同類なのだろうな。
…「カンパチのゴマ刺」をじっくり味わう間も無く、海鮮丼も配膳される。
「キッチン」と言う屋号で、洋風の献立も取り揃えている様だが、
客の大半は、此の「海鮮丼定食」を始め、「刺身定食」や「天刺定食」等、
魚介の和食の献立を発注する様で、海沿いでは矢張り、魚を頂きたい。
さて、其の海鮮丼はと言うと、間八四切れ、真鯛二切れ、蛸二切れ、鮭二切れ、
甘海老二尾、烏賊、鮭子、若布が盛り合わされている。
関東地方の人間からすると、此の手の海鮮丼には、必ず鮪が入っている認識で、
其れが普通と思って生きて来たが、西日本は鯛を始めとした白身の文化なので、
其れも改めて実感した三日間でもあった。
魚はと言うと、新鮮で旨いが、切り口は薄切りで、欲を言えば、
もう少し分厚いと食べ出が有ろうが、其れは贅沢と言うもの。
問題無く美味しく頂戴し、後続客も続々と訪れ、混雑も凄いので、
食後の飲料はお断わりし、後客に席を譲って退店。
十六時五〇分発の「のぞみ」五十二号で現実へと引き戻される社会不適合者…。
~御負け~
志賀海神社から本土方面を臨む。