…金曜日。
ぐったりとして旅籠で一眠りすれば、何時の間にやら十九時半を廻っている。
此の日の晩は、事前に予約をしておらず、旅籠から遠くない距離で、
目星を付け、此方に電話をすれば直ぐに入れると言うので、現場へ急行する。
博多どんたく開催中とあって、街の彼方此方から催し物の音が聞こえる。
大通りを避け、路地を天神方面に歩き、二〇時半前に到着。
丁度、客が帰った後の止まり木に通され、ヨッコイショーイチ。
…さてと、先ずは酒を発注しよう。
ホッピーは無い様なので、ルービーにしよう。
寝起き、歩き疲れ、暑さでぐったりしている所へ、気付けの麦酒。
気の利いた小洒落た店の止まり木で、博多最後の晩をゆっくり愉しもう。
御通しは伽羅蕗の煮物、白和え。
…さて、肴はと言うと、取りも直さず、刺身が無いと嫌だ。
手っ取り早く、「お刺身の盛り合わせ」が有り、且つ、二人前で発注すれば、
「名物!五島のゴマサバ」を付ける事が出来ると言うので発注。
然し、何てこったい、すっとこどっこい、連休中で然も此の時間じゃ、
鯖は売り切れとの事で、代わりに、白身で誂えて呉れると言うので御願いする。
そして、先ずは瀟洒な大皿で、七品の刺身が供される。
地元福岡県は東峰村の小石原焼と言う器らしい。
七品の説明を調理長氏から受けるも、幾つか聞き漏らしてしまう…。
其の日、其の季節に一番美味しいと思う旬の魚を、厳しい目利きで買い付ける。
上品な白身の味わいだが、旨味が強く、鯛に負けず劣らずの旨さ。
烏賊はコリッとしつつも、ねっとりとした甘味も感じられる。
一〇時の方向の白身は鯛の様な感じだが、違う様な、何ちゅうか、本中華…。
十二時の方向に控えしは、〆鯖の炙りで、仄かな酸味と鯖の脂が秀逸。
其の隣の皮目を炙った物は魳だろうか、香ばしくて旨い。
其の下も鯖だった様な気がするが、如何もポンコツで駄目だわね…。
本鮪、此れだけは馬鹿でも分かる。
中トロの部位で、トロっと蕩け、鮪文化の関東の人間も大満足。
そして、別皿で、胡麻鯖の代わりに平目で拵えて頂いた「ゴマヒラメ」。
関東では、刺身をこうして頂く事は無いが、此れは真似出来るかも知れんな。
…さて、麦酒は一杯で止し、九州なので焼酎に移行しようと思うも、
普段は「金宮」しか呑み付けないので分からず、気紛れで日本酒にしてみる。
そして、肴は献立表で一際目を引いた雲丹に決定。
北海道産の雲丹を、自家製の海苔の佃煮や味付け海苔と一緒に頂くと言う。
味付け海苔に雲丹を乗せ、醤油代わりに海苔の佃煮を塗して頬張る。
雲丹は勿論、明礬臭さは一切無く、甘味が強く、海苔が磯の薫りを強める。
嗚呼、こんなの卑怯な旨さだ…。
…「東一 純米吟醸」もあっと言う間に空いてしまい、次も日本酒にしてみよう。
地元・福岡県の「美田 辛醸山廃純米」八七〇円で。
肴は、博多に来たのだから、辛子明太子は頂いて置かないと罰が当たる。
一腹丸々の量が出て来て、此れならば御値段以上「照-TERRA-」だ。
厳選した鱈子を旨味の強い羅臼昆布と秘伝の唐辛子タレに漬け込んだと言う。
子供の時分より鱈子が大好物、魚卵フェチのプリン体愛好家には堪らんな。
日本酒が日本酒がススムさんだが、胃袋には若干の余裕を残して退店。
博多の二晩の居酒屋は孰れも大当たり、二打数二安打の二本塁打の活躍。
恐るべし博多と言った感じで、大宮辺りじゃ御目に掛かれない素晴らしさに、
秀樹じゃなくても感激…。
~御負け~
博多総鎮守・櫛田神社。
警固神社。