金曜日の晩に家に居ると言うのは、何時以来の事だろう…。
向ヶ丘での仕事を終え、晩は如何しようかと思案した。
何時もであれば「和彩楽酒 かもん」へ、文句無く出掛けるのだが、
何と無く億劫で、外で呑む様な気分でもない。
金曜日の晩は外で呑まないと気が済まない此の僕が…。
他に妙案が浮かばなかったので、スーパーマーケットで酒と肴を購入する事に。
然し、此れと言って食べたい物は無い。
食に対する興味が失われつつあり、何が食べたいと言うのが無い。
抑、スーパーマーケットと言う場所が余り好きではない。
「スーパーマーケットに行く=自炊をせねばならない」と言う構図が出来上がっているので…。
其れに、スーパーマーケットと言う場所は、幸せな家庭が有る人だけが楽しい場所だと思うので…。
其れはさて置き、此れと言って食べたい物も見付からず、何も買わずに出る。
此の儘、何も呑まず喰わずで遣り過ごそうとも考えたが、
昼間は例によってコンヴィニエンスストアのパンのみの為、腹の虫の御機嫌伺う為にも、
何でも良いから一週間を締め括ろうと、スーパーマーケットを梯子する。
まあ、同じ系列の店なので、品揃えは差は無いのだが、
鰹の叩きと鬢長鮪の柵、麦酒と酎ハイを購入して帰宅。
呑むと億劫に成り、風呂に入るのも嫌なので、先に身を清め、後は寝るだけのだらしない状態に。
「面倒くせぇな…」と呟き乍ら、柵で購入した鬢長鮪を切る。
切ったは良い物の、刺身を盛る皿なんぞ、此の男鰥夫の家に有る筈も無く、
元のポリエチレンの容器へと戻し、晩酌の準備を整える。
贅沢にも、サントリー社の「モルツ」を呑み、独り侘しく錆落とし。
和歌山県産と言う鬢長鮪はパサパサ感が強く、正直外れ…。
静岡県産の鰹の叩きは食べられなくはなく、普通に頂戴する。
まあ、酔えれば何でも良い…。
其れにしても、薄ら寒い部屋で、一週間に数分しか点けないテレヴィヂョンを点け、
薄ぼんやりと酒を呷っていると、富士の樹海に行きたくなる位に切ない…。
今宵は何だか、高々五〇〇ミリリットルの麦酒と、五〇〇ミリリットルの酎ハイで駄目に成りそうだ…。