続・ROCK‘N’ROLL退屈男

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「神戸 ふわとろ本舗」【明石】


 …岐阜での仕事を十八時半に終え、バスに揺られてJR岐阜駅へと向かい、
  在来線で名古屋駅へと出て、「のぞみ」二四九号に乗車し、一路、明石を目指す。
  新大阪駅で降り、在来線に乗り継ぐが、全く土地勘が無いので分かり辛い…。
  山陽本線西明石行きと言うのが来たので、慌てて飛び乗る始末。
  関西圏と言うのは外国の様な感じで、正直、身の危険を感じる。
  挙動不審に周囲を見廻し、必要以上に警戒してみる。
  エスカレーターの歩く側が左と言うのも解せない…。
  「電波少年」で海外に放り出された芸人の様に、やっとこさっとこ明石駅に降り立つ。
  宿に二十二時前に転がり込み、其処から、土地勘の無い中、晩御飯を摂りに出掛ける。
  殺されそうな恐怖に怯え乍ら…。
  明石に来たのだから、明石焼きと言う物が有ると言うのは見聞していたので、
  其れが頂けそうな御好み焼き屋を見付け、恐る恐る、飛び込んでみる。
  独りで入る客を見付け、真似する様に後に続き、カウンター席に陣取る…。

 ◎「生ビール」三九九円
 …名古屋駅からの新幹線の車中で、五〇〇ミリリットルの缶麦酒を空けたが、
  其れは其れ、此れは此れ、余所は余所、家は家…。
  見知らぬ土地の見知らぬ店で、何の寄る辺の無い不安な中で、頼れる物は麦酒だけ。
  仕事疲れと移動疲れが重なり、襤褸雑巾の様な此の身…。
  冷えた麦酒が一段と旨く感じられる。

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 ◎「明石焼」三九九円
 …メニューに穴が開く程に見渡し、矢張り、此処は明石焼きだろうと、意を決して発注。
  関西人は外国人だと思っているので、恐怖に戦く小動物の様に怯えて発注する…。
  さて、三十三年間も生きて居乍ら、生まれて此の方、明石焼きと言う物を頂いた事が無い。
  正直、蛸焼きの別の呼び名だと思っていた程…。
  然し、何と無く、出汁に浸して食べる様な事は、風の便りで聞いている。
  明石焼きなる物が、付け板に八個載せられて遣って来る。
  少し遅れて、出汁汁も運ばれて来る。
  うん、見た目は黄味を帯びた蛸焼きだな…。
  透き通った出汁に浸して頬張ると、吃驚する様な柔らかさで、ふわふわとした食感。
  何なんだ、此のふわっふぁ感は…。
  中には蛸が入っている。
  出汁はあっさりとして居乍ら、しっかりとした味わいで、永谷園の御吸い物の様。
  其のふわふわな皮が、此の出汁をふんだんに吸い、口の中で、水風船の様に弾ける。
  然し何だ、こんな柔らかい物ばかりを頂いていては、顎が退化して、噛む事を忘れてしまうな…。

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 ◎「ふわとろ焼」五二五円+「スジ」三一五円
 …幾ら何でも、明石焼きだけでは腹の足しに成らないので、御好み焼きも頂いてみる。
  此の際、清水の舞台からバンジージャンプした心持ちだ…。
  此方の店名を冠した「ふわとろ焼」と言うのが、定番の御好み焼きの様だ。
  此れにトッピングをしないと、具無しの物が出て来そうな感じなので、
  店の戦略にまんまと嵌り、「スジ」をトッピングしてみる…。
  厨房内で焼き上がると、目の前に設えられた鉄板の上に御好み焼きが置かれる。
  見た目は実に簡素で、少々、心配に成る…。
  御好み焼き特有の箆で、等分して割り、小皿に取って頂く。
  先ずは其の儘頂いてみると、此方も驚く程にふわふわしている。
  一体、此の店はどれだけふわふわすれば気が済むのだろうと悩んでしまう程…。
  恐らくは繋ぎに山芋を使用しているので、此のふわふわ感が醸し出されるのだろう。
  此れ又、顎が退化し、小泉今日子女史の様に、逆三角形の顎に成りそうだ…。
  具のスジの味はするのだが、実際に中から飛び出して来るのは蒟蒻の方が多い。
  然し乍ら、中のトロトロ感と相俟って旨く感じられる。
  次は、卓上のマヨネーズをぶっ掛けて頂いてみる。
  矢張り、マヨネーズは偉大で、旨さが格段違って来る。
  更には、つけ麺宜しく、鰹節を振り掛けて頂くと、足の親指が悦ぶプリン体祭りと化す。
  最後は青海苔を振り掛け、磯の風味を付加し、存分に堪能してみる。
  偶に頂く御好み焼きも実に旨いものだ。
  明石と言う、縁も所縁も無い土地が、旅情を掻き立てるのであろう…。

 麦酒は計三杯頂戴し、酩酊気分で明日の仕事に備えるべく、宿に帰還する…。