「居酒屋 やず」【宮原】

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◆「居酒屋 やず」【宮原】

　…金曜日。
　　浦和での仕事を終え、近場なので普段より格段に早く帰って来られるのが助かる。
　　幾らか、気持ちの中で自粛の思いを持ちつつ、花金なので一週間の錆落としに出掛ける。
　　今年の一月、宮原の「和匠喜酒 かもん」閉店以降、花金は家で過ごす事が増えたが、
　　此処最近は、「電氣ブラン」の瓶を取り置きしている此方に立ち寄る機会が増える。
　　あの大震災の日も、上大岡での仕事を終えたら、此方で一杯遣ろうと思っていた…。
　　十九時前に店に入ると、厨房前のカウンター席には常連が陣取り、僕は常連と言うには程遠いので、
　　何時もの、バーカウンターの様な造りのもう一方のカウンター席に落ち着く。
　　重たい鞄と一緒に、一週間分の疲れも置き、ヨッコイ、ショーイチと腰掛ける…。

　◎「アサヒスーパードライ生ビール（中）」四五〇円
　…仕事の疲れもそうだが、震災の被害や、原子力発電所の事故から齎される精神疲労も有り、
　　ドッと疲れが表出した感じで、椅子に腰掛けた途端に、大きく溜息を吐いてしまう。
　　そして、先ずは麦酒で疲労を癒し、生きる気力を充填する。
　　スピッツの草野マサムネ氏が、一連の震災、原子力発電所の事故の報道を観て、
　　其れに因る精神的ストレスの影響で、リサイタルを延期したと言う記事が有ったが、
　　此れは分からなくも無く同感で、実際に被災された方々や、東京電力には怒りしか無いが、
　　其の下請け、孫請けで、現場で過酷な作業を強いられている方々の苦痛は計り知れないだろうな…。
　　こうして、冷たい麦酒を遣れるだけで、至極幸せな事だ。
　　御通しは、油揚げに茹で玉子を詰めて煮た物で、此方は気の利いた御通しが出て来るのが良い。

　◎「マグロ中おち」五八〇円
　…居酒屋で刺身と言えば、今は亡き「和匠喜酒 かもん」では当たり前に頂いて来たが、
　　今と成っては其れも頂けないが、此方でも最初は刺身から頂く事にしよう。
　　正直、刺身を売りにしている店ではないが、酒の摘みの端は刺身に限る。
　　鮪の中落ちと言うが、脂の載りは強くなく、寧ろ、赤身に近く、さっぱりしている。
　　特筆すべき点は取り立てて無く、何の変哲も無い鮪だが、ネットリとした赤身の旨さが有る。
　　彼是と贅沢を言う傲慢な心も、三月十一日以降無くなった…。

　◎「グリーンアスパラ炒め」五〇〇円
　…麦酒を二杯呷った後は、此方では決まって「電氣ブラン」。
　　其れをロックでチビチビ舐めつつ、摘みは何しようかと悩み、野菜嫌いの此の僕が、
　　好んで頂ける数少ない野菜の一つであるパラガスを炒めた物が有ると言うので発注。
　　洋酒には合いそうだ。
　　適度な長さに切られたパラガスとベーコンを炒めた物で、味付けは塩胡椒。
　　パラガスのシャキッとした歯触りとベーコンの塩気が良く、珍しく野菜を堪能する。

　◎「ぎょうざ」三〇〇円
　…此の所、此方を訪れる度に発注しているのが餃子だ。
　　此れ又、何の変哲も無い、スーパーマーケットで売っている、焼くだけの餃子の様だが、
　　抑、餃子は酒の摘みとして適しており、餃子と言う食べ物自体が好きだ。
　　モチモチとした皮、噛むと中から溢れ出る肉汁、其の熱さを酒で流し込む。
　　此の一連の流れが最高に旨い。
　　僕は別段、舌が肥えている訳でも、料理評論家でもないので、普通の物でも普通に美味しく頂ける。
　　手の込んだ、手間隙掛かった物は旨いのは当然で、こうした在り来たりの物の中に本当の旨さが有ろう。

　麦酒二杯、「電氣ブラン」二杯を呷り、程好く酩酊し、腹拵えに「すき家」で牛丼を胃袋に詰め、
　震災後の食糧の儘成らない状況と、今回のぎっくり腰の所為で幾分痩せた身体を元に戻す作業をしてみる…。
　　
居酒屋やず　[ 居酒屋 ] - Yahoo!グルメ

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住所： 埼玉県さいたま市北区宮原町3丁目275
営業時間、定休日：
最寄り駅： 宮原
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※2011年4月3日時点の情報です。
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