◆「益子 森のレストラン」【益子】
…矢張り、土日の労働はきつい。
心の底より羨ましく、恨めしく、憎たらしく存じます…。
平日休み、不定休の賤民は、今週は月曜日、金曜日に休日が宛がわれる。
あれだけ、御願いだから連休をと切望しているにも拘わらず、
苛めの様にこうして飛び石で宛がわれると、もう、怒りを通り越して呆れる。
休みが有るだけ有り難い、其れは十分に承知しているし、
一時期の十四連勤、十三連勤、一〇連勤を耐えた僕なので、分かっている。
まあ、仕事だからと割り切って、我慢して、堪えているが、僕も人間なので、
壊れる時は、いとも容易く、脆く、崩壊するだろうな…。
昨晩は二十三時半に帰宅し、晩酌をし、午前一時半には気絶。
最近の熱帯夜続きで、冷房を点けているので、ズリオロスパンチョスも回避、
核燃料棒が剥き出しで、炉心溶融する事も無く眠る。
とは言え、仕事の夢で魘されはするが…。
さて、休日が一日しか無いので、休養に充てる時間も無い。
朝は七時過ぎに目が覚め、寝床でもぞもぞし、八時に起き出す。
疲労を押して、偶には遠出してみよう。
土日休みを剥奪され、すっかり、人間らしい生活が奪われてしまい、
休日も疲労困憊で余暇を過ごさねば成らないので厳しい…。
出掛ける先は、思い付きで、栃木県は益子町。
別段、意味は無いが、行った事が無かったので、只、何と無く…。
九時に家を出、さいたま栗橋線、国道四号線、国道一二五号線、
国道新四号線バイパス、国道五〇号線結城バイパス、国道二九四号線と、
吝嗇なので、一般道で三時間掛けて到着。
直ぐに昼御飯の時間なので、予め、目星を付けていた此方へ向かう。
擦れ違い不可能な細い、舗装されていない砂利道を通り、何とか辿り着く。
正に、森の中の山小屋風の店で、婦女子が佃煮にする程に居る。
尤も、年齢層は高目で、四〇から六〇代が殆どだが。
まあ、六〇歳が一人居たら、二〇歳の娘が三人居ると思えば良いか…。
店内の席が満席の為、野外席でも良いかと訊かれ、問題無いので外で。
◎「ノンアルコールビール」三五六円
…自動車で来た事が、全く以って痛恨の極み。
呑まなきゃ遣ってられないのに、呑めない辛さ…。
少しでも、麦酒を呑んだ気分に成ろうと、滅多に飲まない麦酒風炭酸水を。
敗北感一杯だね…。
シュワシュワ感の強いホッピーを飲んでいる様で、切なく成って来る。
まあ、外気に触れ乍ら飲食する気分の良さに免じて許そう。
御通しは何かのメーマー。
◎「和牛のハンバーグ(ボリュームアップ200g)」二〇五二円
…食事は何を頂こうかしらと、メニューを眺めて悩む。
目を惹くのは、「和豚もちぶたのコンフィ」と「和牛のハンバーグ」。
矢張り、肉は強い。
他にはゲッティーが有るが、腕白中年は肉を欲する。
勿論、ゲッティーも良いのだが…。
さあ、肉の二択だ。
さんざっぱら悩んだ結果、肉の量が増やせる「和牛ハンバーグ」に決定。
増せる物は増しておかないと。
と言うか、第一、コンヒーが何だか分からないので無難にバーグで…。
テレレが二種類から選択出来、「自家製おろしソース」とデミグラスソース。
其りゃ、「自家製」と言われちゃ、其れを選ばざる得んでしょう。
さて、発注も終え、席を立つ。
此方の昼御飯には、主役の料理に加え、前菜の「ブッフェ」が付くと言う。
何だい、其のブッヘって。
女店員の説明から察するに、食べ放題、取り放題の御数が有るらしい。
但し、取るのは一回限りとな。
早速、熟女に混ざり、ブッヘ会場に不釣合いなへっぽこ中年が潜入する。
成る程、宿の朝御飯みたいな物ね、ガッテンガッテン。
益子焼の皿を取り、取り敢えず、一通り、戒律を破らない範囲で取ろう。
何せ、宗教上の理由で野菜が禁じられており、其れを破った日には、
「*」に乾電池を埋め込まれ、アンドロイドにされてしまうので…。
「ホタテのサラダ」、「キャベツとベーコンのコールスロー」、
「エビともやしの春雨サラダ」、「かぼちゃの肉あんかけ」、
其れにしても、戒律スレスレだ…。
何れも、物足り無さは有るが、味は素晴らしい。
然し、今日の陽気じゃ、外は暑いな。
丁度、バーグが運ばれて来た所で、店内の空いた席へと移動する。
冷房が効いた部屋でないと、デヴには優しくないのでね…。
さて、鉄板の上に乗せられた肉塊は蠱惑的だ。
ぷっくりと、こんもり丸く膨らんだバーグは、夢と希望が詰まっていよう。
「特製おろしソース」とドヴァっとぶっ掛け、ヂウヂウと言うのを見届ける。
箸を手に取り、其れを割り、いざ頂く。
此の牛肉は、山形県は関谷牧場と言う所で飼育された牛肉との事で、
十四種類の合法ハーブ飼料を使用し、健全に飼育された肉牛と言い、
融点は二十三.九度と低く、口の中で蕩ける食感で、腹の中でも溶け易く、
身体に優しく、漢方和牛と呼ばれる肉は健康的らしい。
確かに、口の中に入れると、軟らかく、ふわふわとして、蕩ける感じ。
肉肉しさは感じるのだが、バーグ特有の丸めて固めた様な硬さは無い。
ふっくらとして、中も極めて仄かに赤味が残り、和牛ならではのバーグ。
「特製おろしソース」はさっぱりとしているが、物足りなさは無い。
酸味と爽やかさが心地好い。
抑々、バーグなんて、嫌いな人間は居ないしね。
況してや、腕白中年と来たら、大好物だしな。
小父さんは森林で癒されたよ。
多分…。
~御負け~
益子焼窯元共販センター入口の狸。
まあ、立派な事…。
益子焼窯元共販センターの宣伝をどうぞ。
何だか、悲しく成るけど…。