◆「手打そば 刀屋」【上田】
◎「もりそば（中）」六五〇円
…昨日。
今週も、週末の休日だけが生きる希望、唯一の救いで、何とか漕ぎ着ける。
疲弊したので、休日は家でヂッと、大人しく静養に充てると言うのも一考だが、
何だか、非日常に身を置いて、気分転換を図るのも良かろう。
そんな折、今秋は何でも、松茸が豊作と耳にする。
松茸と言えば、上田が一大産地で、上田の血が入っている僕からしたら、
大いに興味が有り、豊作で価格が下がれば手に届くかも知れないと考える。
序に、数少ない趣味である「ケータイ国盗り合戦」の「夏の陣」、
長野県の「将玉泉」の上田の「城下駅」、小布施の「岩松院」も攻略しよう。
家を八時に出立し、関越自動車道東松山インターチェンジから乗り、
事前に調べた「上田市丸子農産物直売加工センター あさつゆ」に行けば、
時季も終盤の所為か、松茸は既に無く、さっさと次の当てへ向かう。
「農産物直売所 マルシェ国分」へと急行し、正午前に現場に到着。
確りと、松茸専用の売り場が設けられており、中には、買い物籠一杯に、
業者の如く購入している爺も居り、流石は上田、松茸は生活に馴染んでいる様だ。
形の良い物は開店早々に売り切れてしまうらしく、傘が開いているのが多いが、
何とか、形の良い物と傘が開いた物の二本が入った松茸を購入して一安心。
目的を一つ果たした所で、次は腹拵えで蕎麦を頂こう。
上田で蕎麦と言えば、此方が一番であると、個人的には思う。
とは言え、他には「東都庵」、「草笛」程度しか知らないが…。
店舗の駐車場は満車、待ちが発生している有様なので、時間貸し駐車場に停め、
店に着けば、二〇人近い行列で、仕方無いので最後尾に接続し、
気温一〇度を少し超えた曇天の下、只管にヂッと堪えて待つより他無い。
忍耐力を鍛え、四〇分程で漸く店内へと通され、ヨッコイショーイチ。
献立表を眺めると、二〇一二年十一月十七日に御邪魔した時もそうだが、
此方では「もりそば（普）」しか頂いた事が無いが、もう此の歳なので、
其の量は無理が祟ると自重し、「もりそば（中）」に格下げする。
御案内迄に、此方では「小」→「中」→「普」→「大」なので悪しからず…。
発注を済ませ、其処から更に忍耐心の鍛錬を積み、店着から五〇分、
入店から一〇分で、待望の蕎麦との御対面。
此の少し色黒の、無骨な感じの、田舎蕎麦然とした佇まいが好きだ。
蕎麦つゆに薬味の葱、大根卸、山葵を投入し、其の蕎麦を手繰って浸す。
いざ啜れば、冷水で確りと〆られ、キリっとしている中に、僅かに滑りを感じ、
ともすると、モソモソしてしまい勝ちだが、其の滑りが滑らかさを齎している。
そして、江戸の「更科」、「籔」とは大きく異なる、豪快な蕎麦切りで、
喉越しを愉しむと言うより、確りと噛み締めて味わうと言った趣き。
ごわごわとして、不揃いな感じも、食感として愉しい。
今日日、小洒落た蕎麦屋に入ろうものなら、確かに、厳選した素材を使用し、
手間暇が掛かっているのだろうが、三口で食べ終わる様な量で一〇〇〇円超だ。
然し、此方のは、食べ出も有るわ、旨いわで、育ち盛りには堪らないな。
蕎麦つゆは辛口の部類に当て嵌まろうか、甘ったる過ぎなくて良い。
何だかんだ、四〇〇瓦程度だろうか、ぺろっと平らげてしまう。
〆に蕎麦湯で割って頂くが、此の蕎麦湯がとろとろのローションプレイの様で、
蕎麦焼酎を此の蕎麦湯で割って呑んだら、嘸かし旨いに違いない。
かの池波正太郎も此方を愛し、「…並のもりそばでも、東京の三倍はある。
大盛りとなれば、とても私ひとりでは食べきれない。
昼どきは、客があふれんばかりに詰めかけて来るので、私はいつも、
午後の空いた時間をえらぶことにしている。
この店の入れ込みへあぐらをかいて、ゆっくりと酒をのむ気分は何ともいえない。
合鴨とネギを煮合せた鉢や、チラシとよぶ天ぷらなどで酒をのむわけだが、
旅の気分も手つだって、まったく、「こたえられない……」のである。」、
と著している様に、何とも、相変わらず魅惑的な店である。
～御負け～
此れで五五〇〇円ならば良い買い物か。えらぶ〇円ならば良い買い物か。
