◆「塩そば専門店 桑ばら」【池袋】
◎「カツオのおそば」九〇〇円
…昨日。
今年も色々有り、新たな業務に悩み、勉強し、踠いた一年の労働を終える。
今年は今年で、一日一日を熟して行く事で精一杯だったナァ…。
一日を無難に乗り切る事を第一に考え、一歩一歩、寿命に向かって暮らす。
そうして何とか生き永らえた印象だ。
来年も彼是と環境の変化が見込まれ、心がぞみぞみする事は間違い無い…。
さて、話は遡って金曜日。
一年の労働の最終日、仕事納めを迎えるも、普段と何ら変わらない忙しさ。
電子的書簡も減るのかと思いきや、一〇〇通近い数を開封するのも大変。
そんな合間を縫って、十四時前に、今年最後の池袋での昼餐を摂りに出る。
「麺処 花田」、「カラシビ味噌らー麺 鬼金棒」の大行列を見て、嫌な予感。
街は既に、休みで浮かれ気分でRock❛n❜Rollな輩が湧き出している。
南池袋パーク商店街へと入ると、何てこったい、遠くに大行列が見える。
「駄目だ此りゃ、次行ってみよう!」とあっさりと諦めて踵を返す。
こう成ると、次なる当ては、事前に「裏そば」を検索していた此方へ。
今年最後は此方に御厄介に成ろう。
行列も無く、店内には一組二人のみで安心し、店外の券売機で食券を購入。
「本日の裏そば ◎カツオのおそば ¥900」と簡素な品名が記され、
同額の「梅塩そば」の食券を購入する様にとしてあり、其の通り従う。
白い暖簾を跳ね上げて店内に入り、端っこの席にヨッコイショーイチし、
看板娘氏に食券を手渡し、「裏で」と告げ、冷水を受け取る。
冷水を呷り、携帯電話を弄る暇も無く、着席から二分でラーメンの完成。
相変わらず、立ち喰い蕎麦屋並みの早さでの提供は、目を瞠る物が有る。
小さ目の丼で差し出された其れは、名前の通り、正に蕎麦の様な佇まい。
びっしりと敷き詰められた、分厚く大きい叉焼が威圧的で、堂々たる風格。
真ん中に落とされた生玉子に、何とも鮮やかで、華やぎを齎している。
先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。
表面には僅かに鰹の魚粉が浮かび、此れを啜れば、膨よかで芳醇な、
薫り高い鰹の効いた味わいが、寒さで冷えた身体に一気に入り込んで浸透する。
基本は御馴染みの大山地鶏の出汁と思われるが、押し寄せるコクが素晴らしい。
名前や丼の見た目から、日本蕎麦を意識していると思われるが、
此の時期に成ると、落語「時蕎麦」の美味しい方の蕎麦の風情が恋しくなる。
「おっ!随分と鰹節奢ったな?こちとら蕎麦っ喰いだ、良い出汁使ってるな」、
そんな台詞が思い起こされ、冬の風物詩の様にして大いに愉しむ。
麺はと言うと、中加水程度の細麺で、此れが又、ポキポキと音がする程、
確りと腰が効きつつも、しなやかさも併せ持ち、玉子の白身と絡めて啜る。
ヅルッと、玉子の甘味も味わいと、麺自体の食感と風味も堪能出来る。
延々と啜って居たい程だ。
さて、次は、五枚の巨大な叉焼に取り掛かる。
味付けは薄目だが、肉質は素晴らしく、赤身の部位はモキっとした歯触りで、
豚のちゃんとした旨味が有り、脂身もきちんと付着しており、ぷるんと軟らかい。
此れだけ叉焼が入って九〇〇円で、原価を心配してしまう程。
具は他に海苔と葱で、勿論、玉子の黄身は最後迄取って置き、締め括りに、
プースーと一緒に口内に含み、鰹出汁と合わせて、至福の時を迎える。
今年十四回目の訪店を終え、果たして来年、何回御邪魔出来るだろうか…。