◆「塩そば専門店 桑ばら」【池袋】
◎「肉豚豚魚のそば」一〇五〇円
…昨日。
一週間は本当、果てし無く永く、永遠の様にも感じられる。
過ぎ去った日々は、あっと言う間に感じられるのに…。
此処数日、ずっと座りっ放しの仕事が祟ってか、腰の塩梅が思わしくなく、
椎間板ヘルニヤ持ちとしては、動く度に苦悶する。
腰は痛む、肩は凝る、汗は掻く、身体は重い、気も重い…。
痩せたら少しは違うのかなと思いつつも、体重が落ちないのだから仕方無い。
男性諸氏なら御分かりと思うが、腹が邪魔して、愚息が見えないのよ。
尤も、愚息が粗チンと言う理由も有ろうが…。
馬鹿はさて置き、話は遡って金曜日。
五日目と成れば、何とか漕ぎ着けた感じで、ちったぁ、華金の解放感が有る。
別段、晩に呑みに行ったり、愉しみは何一つ無いが。
せめて、唯一の生き甲斐である昼御飯だけは愉しみたい。
毎日、此方の「裏そば」を検索しているが、一気に惹かれてしまう。
御店主が生まれて初めて魚介豚骨を拵えたと言い、此れはと思い、現場に急行。
店外の券売機上には、未だ白板が出ており、売り切れていない様だ。
「本日の裏そば ◎肉豚豚魚のそば ¥1,050」と記されており、
読み方は「トントンウオーン」とルビが振られており、
「塩チャーシューそば」の食券を購入し、「裏」と告げる様にとしてある。
確りと指示を遵守し、暖簾を跳ね上げ、広く開け放たれた入口から入り、
僅かに一席のみの空席が有り、幸運とばかりにヨッコイショーイチ。
食券を手渡し、「裏で」と告げ、冷水を受け取る。
厨房内の御店主は調理をし出し、看板娘氏は「パピコ」を吸い出す。
冷水を呷り、店内に鳴り響く私立恵比寿中学の曲を聴くでもなく、
薄ぼんやりと過ごしていると、五分程で丼が配膳される。
すっきりと澄んだ塩ラーメンが売りの此方だが、プースーは確りと濁っている。
此れは期待が持てそうだと、先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜る。
粘度は低く、さらっとしており、醤油ダレの切れと酸味が感じられ、
続いて、まったりとした、コクの有る動物系の出汁が舌を撃ち抜き、
魚介の馨しい風味が鼻腔を駆け抜けて行く。
嗚呼、此れは良いぞ。
魚介豚骨と言う括りで言うと、最近のお気に入りは「中華そば 青葉」だが、
プースーの色合い、味わいは其れよりも濃く、膨よかなコクが堪らない。
麺はと言うと、中太程度で、するすると入って来るが、噛むとバツっと、
歯切れ良く千切れ、しなやかさと力強さを併せ持っている印象。
麺を啜り、プースーを啜ると言う繰り返しが実に美味しく、手が止まらない。
「肉豚豚魚のそば」と言う名の通り、叉焼もたっぷりと入っている。
賽の目状に刻んだ物がごろごろ入り、プースーの熱で軟らかさを取り戻し、
脂身の部位はとろんと蕩け、其の濃厚な味わいが、プースーのコクと良く合う。
赤身の部位はさっくりとした歯触りで旨い。
味付け玉子は相変わらず素晴らしく、黄身がねっとりとして、味も染みている。
具は他に麺麻、海苔、鳴門、葱、三つ葉。
余りの旨さにぺろっと平らげ、プースーも残らず飲み干す。
此の僕の一杯で、あと残り三食の様で、此れに在り付けた客は幸運だな。
其れにしても、此方の「裏そば」には脱帽だ…。