◆「博多ラーメン ガツン 本所本店」【蔵前】
◎「ラーメン」六〇〇円
…昨日。
今日は目出度くも、即位礼正殿の儀と言う事で、お零れを頂戴するかの様に、
こうして祝日を迎えさせて頂くのは、何とも有難い限りだ。
週が明け、どんよりとした陰鬱な月曜日を乗り切れば、直ぐに休める。
何て素敵な事なのだろうと思う一方、稼働日が一日減る影響が大きく、
てんやわんやの月曜日で、労働し乍ら吐き気を催しそうだった…。
そんな苦行の中、此の日は運良く独りぼっちで昼御飯を摂る機会に恵まれる。
偶にはこう言う御褒美が無いと、心が複雑骨折してしまう。
十三時四〇分過ぎに外へと飛び出し、大きく溜息を吐き出す。
手っ取り早く、且つ、月末なので費用対効果の良い物を頂きたい。
なので、脱北者宜しく、スミダ河を決死の覚悟で渡り、スミダ区へ亡命を果たす。
向かう先は一〇月一〇日以来、十一日振りの此方へ四度目の訪店。
十四時前に店内に入れば、先客は二名のみで、単独潜入の若い女性も居る。
若くて綺麗な方でも、家畜臭いラーメンを食べたい日も有るのだな…。
券売機で「ラーメン」の食券を購入し、止まり木にヨッコイショーイチ。
食券を提示し、檸檬入りの冷水を汲み、火照った身体を冷却すべくグイッと呷る。
厨房内は前回の妙齢の女性店員氏ではなく、男性店員氏一名体制。
がっかりしつつ、店内に流れる「俺のラーメンの唄」、「ラーメンR&R」と言う、
暑苦しさ控え目の長渕 剛の様な曲を聴かされ、すっかり耳が慣れた頃、
五分強でラーメンが差し出され、手元へと下ろし、擂り胡麻と紅生姜を投入し、
先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。
御覧の通り、外気に触れて、表面の膠原質、油分が凝固して行く様が素晴らしい。
下茹で、灰汁取り、長時間圧力煮込みに依り、豚骨を粉砕して裏漉しする為、
背脂を入れた様な円やかな仕上がりで、豚骨から抽出された髄と言う。
純度一〇割の豚骨は円やかで滑らかな口当たりも、野性味溢れる味わいも主張し、
此れで六〇〇円で、替え玉一玉無料は費用対効果は抜群で、素晴らしいの一言。
此処「本所本店」を始めとして、「両国店」、「扇橋店」を展開し、
「多田製麺所」直営と謳い、麺の経費が削れる企業努力からだろう。
其の麺は、季節や気温、湿度、水温の変化に応じて、日々、加水量等を吟味し、
豚骨スープと相性抜群の低加水麺を製造していると言い、特に夏期は気候を考慮し、
鮮度保持性の高い冷蔵貯蔵で麺を熟成させ、旨味が凝縮した状態を維持との事。
もそもそとした感じの細麺は、粉の風味も感じられ、低加水で秀逸。
叉焼は薄っぺらだが、しっとりとした口当たりで、豚の臭味は感じられない。
具は他に木耳、浅葱。
さて、替え玉を御願いしてみよう。
勿論、茹で時間二秒の「湯気通し」で発注し、菜箸で勢い良く撹拌して笊揚げ。
そして、差し出した丼へと入れて呉れ、此れを啜ると言うより、喰らい付く。
生と言って良い麺は、噛むと歯にくっ付く程で、此の粉っぽさが堪らない。
此れを頂いてしまうと、「粉落とし」さえ軟らかいと感じざるを得ない。
最後はプースーを飲み干せば、丼の底には、膠泥を乾かして削った様な、
薄い桃色をした骨粉、髄が沈殿しており、其れも残らず頂いて退店。