◆「ぜんや」【新座】
◎「チャーシューメンマラーメン」一一〇〇円
…つい此の間、マッカーサーが来たと思ったら、もうセプテンバーだ。
辛子色のシャツ追い乍ら、電車に飛び乗ってしまいそうだ…。
辛く、永く、苦しかった、一ヶ月半の夏季繁忙期も、八月三十一日で終焉。
昨晩は、今日からの三連休の前夜祭、地獄が終わった打ち上げも兼ね、
「かしら屋 大宮西口店」で一頻り酒を呷り、恒例の〆へと雪崩れ込み、
「つけ麺 弐★゛屋~にぼしや~」で煮干しを摂取して帰宅。
其の後は居間の絨毯の上で見事に潰れ、夜中の三時過ぎ迄寝込み、
寝床に移動し、改めて寝入り、朝は八時過ぎに起き出す始末。
風呂に入り、全うな人間に戻り、身支度を整え、一〇時に家を出る。
一ヶ月振りにホスピタろうと予約を入れており、混雑で十五分程待たされ、
一分程の診察を受け、採血をされ、ぐったりして帰宅するポンコツおぢさん…。
正午を廻り、数少ない趣味である「ケータイ国盗り合戦」の「夏の陣」、
「和光市駅」の祠を盗りに行こうと、自動車を走らせる。
滅多に出向かない方面なので、此の手を無駄にしてはいけない。
昼御飯はと言うと、今から十七、八年前に一度だけ御邪魔した事の有る此方。
埼玉県を代表する名店、行列店で、塩ラーメンの人気店。
其の昔は大行列に並ぶと、ラーメンを食べるのに日焼けする程の混雑。
現在は、当時より西に数十メートル移転し、店舗も新しく成った様だ。
国道二五四号線から、志木街道を右折するも、うっかり見過ごしてしまい、
清瀬市の手前で折り返し、何とか店を確認するも、駐車場は満車の為、
十三時半を廻った所だったが、先客一名と、考えられない幸運。
数分外で待った後、女将さんに案内され、店内に入り、券売機で食券を購入。
又と無い機会の為、一番豪勢な「チャーシューメンマラーメン」にしよう。
カウンター八席のみと小ぢんまりとしており、奥から二番目の席に腰掛ける。
目の前には店主氏が居り、距離の近さを感じる。
昔は相当に敷居が高く、カップ麺にも成った名店に入店出来たのが不思議な程。
冷水を呷り、店主氏の調理工程をぼんやりと眺め、出来上がりをヂッと待つ。
背後を振り返り、店外に目を転ずれば、一〇人近い行列が出来ており、
一足違いで事無きを得たと、ホッとしていると、ラーメンが出来上がる。
差し出された丼は、十七、八年前と変わらず、目映いばかりの煌めくプースー。
黄金色が眩しく、一時代を築いた、究極の塩ラーメンが目の前に有る。
逸る気持ちを抑えつつ、蓮華を手に取り、先ずはプースーから啜る。
澄んだ輝くプースーは、阿蘭陀の大手加工油脂業者が製造する最高級の豚脂、
味わいはと言うと、何だろう、コンソメを思わせる雰囲気も有り、
胡椒の風味もじんわりと浮かび上がり、出汁の力強さを感じる。
豚、鶏、魚介の迸る旨味が、怒濤の勢いで押し寄せて来る。
麺は中太で、緩やかな縮れの効いた特注麺と言う。
色味は黄色だが、玉子は一切使用していない低加水麺と言う事らしいが、
プリッとした弾力の有る、プースーとの絡みの良い麺。
具の叉焼は、一切れの大きさは無いが、バラとロースと思しき二種類だろうか。
バラ肉は脂身がプルプルで、サックリとして、蕩ける味わいで、
ロースは赤身の部位の肉肉しさが感じられ、ムチッとしている。
味付けは確りしているが、上品な塩味のプースーを害わない塩気。
麺麻は量が多く、麺麻を御数に麺を啜ると言った塩梅で行ける。
他には青菜、葱が入り、実に綺麗に纏まった一杯。
最後は勿論、プースーを飲み干し、名店の味を堪能する。