◆「居酒屋 やず」【宮原】
…昨晩。
金曜日からの四連休も、此の日が二日目。
早くもサザエさん症候群を患い始め、日中は全く動く事が出来ず、
大半を寝床で過ごすと言う体たらくで、全身の怠さ、痛みと闘う。
何かしよう、出掛けようと、行動を起こすのに、豪い気力を要する。
何もせず、極めて自堕落に、非生産的に過ごし、気付けば日もとっぷり暮れ、
十八時半に成り、さて、晩御飯は如何しようかと考える。
宮原の「地魚と地酒のお店 ゆたか」に、八年六ヶ月半振りに御邪魔し、
気の利いた肴と酒を堪能しようと、重たい腰を擡げて出掛ける。
店に着くと、何てこったい、土曜日だと言うのに閉店ガラガラ…。
後で調べると、第一、第三土曜日と日曜日が定休日とな。
流石はうっかり八兵衛、相変わらず、何を遣っても駄目だ。
行き場を失くしたおっさんは、已む無く此方へと雪崩れ込む。
◎「ホッピー」四五〇円
…四月二十二日以来、五ヶ月半振りに暖簾を跳ね上げて中に入り、
奥のカウンター席にヨッコイショーイチし、手っ取り早く逝ける此れを発注。
不慣れな新人の女中さんなのか、焼酎の量が明らかな致死量で、
此れは、とっとと、いとも簡単に逝ける事を確信する…。
此処数ヶ月の断酒の御蔭で、肝臓の数値が下がって来ていると言うのに。
御通しは、野菜炒めに牛肉が入った物。
◎「マグロ納豆」五〇〇円
…さて、摘みはと言うと、御決まりの白板に記された中から物色する。
兎にも角にも、酒を呑むには、極力、生物が無いと駄目な性質なので、
「マグロ山かけ」と迷ったが、粘粘とした「マグロ納豆」を発注。
鮪のぶつに納豆を乗せただけの物ではなく、確りと味付けをして和えられている。
ヅルヅルと卑猥な音を立てて啜れば、如何にも酒飲みの肴の様な感じが良い。
◎「豚バラ肉のポンズダレ」四〇〇円
…魚の次はクーニーが良い。
先ず気に成ったのが此れ。
萌やしはシャキシャキとした食感で歯触りが良く、香ばしさが感じられる。
豚バラ肉は軟らかく、豚臭さや筋張った感じは丸で無い。
味付けは其の名の通りにポン酢で、脂っぽさを緩和し、さっぱりと頂ける。
◎「電氣ブラン」二三〇〇円
…致死量の焼酎を入れられたホッピーを三杯呷った後は、酒を替えよう。
以前に入れていた「電氣ブラン」の瓶が空いてしまっていた様なので、
新規で瓶を入れてみよう。
既に、呂律も廻らない位にヘベのレケで、相当にポンコツ度が増しているが、
偶には、とことん駄目に成ってしまいたい夜も有るわね…。
◎「牛肩ロースステーキ」九八〇円
…さて、洋風な甘ったるい酒に替わったので、摘みも変えよう。
同じくクーニーで、安価なメニューの中、一際、燦然と輝くのが此れ。
何て言ったって、九八〇円だ。
宝籤は外れたが、偶の贅沢だ、良かろう。
洋食の経歴を持つマスターの仕上げる料理には、一目置いている。
確りと頂いた様だが、如何せん、酔っ払い過ぎて記憶が曖昧だ。
表面がカリッと香ばしく、ロース肉なので、肉肉しい食感だった様だ。
気付いたら、腕組みをした儘、些か寝入ってしまった様で、慌てて会計をし、
何処かで〆て帰る余裕も無く、途中、携帯電話を落下させて拉げさせたりし乍ら、
確実に吐瀉をする事無く帰宅した様だが、家に辿り着いた記憶が無い…。
朝方、念の為、吐瀉していないか確かめたが、全く以って潔白だ。