◆「創作料理 洋庖丁」【新板橋】
…世間様は伴天連正月で、すっかり、浮かれ気分でＲｏｃｋ❛ｎ❜ｒｏｌｌ。
こちとら、師走に齎された超絶悲報に絶句し、来年の後厄を本気で憂いている…。
流石に、幾ら好きな伴天連正月でも、今年は何だか御通夜気分だ。
明るい話題は何一つ無く、失ったり、無くなったり、出て行く物が多い事…。
溜め息しか出ない中、今日は、年に一度の成人病検診。
早朝から糞を捻り出し、聖水を搾り出し、満員電車でジュクシンへ。
健康診断に行く道中で不健康に成りそうだ…。
身長、体重、視力、血圧、腹囲、胸部Ｘ線、採血、胃部Ｘ線、聴力、診察を受け、
十一時過ぎに解放され、空きっ腹に硫酸バリウムで具合が悪くなりそう…。
況してや、採血では血管が分かり辛いと、生まれて初めて手首から吸われ、
そんな肉の付着していない所じゃ、痛いに決まっているわさ。
終了後、珈琲を飲んで落ち着いた後、帰りがてら昼御飯を摂ろうと画策。
「ラーメン二郎 新宿歌舞伎町店」と、魅惑的な店は数多在るが、何か違う。
前日にふと思い立ったのが、其の昔、大山で頂いた「からし焼肉」を、
此処数年ずっと、もう一度頂いてみたいと考えていたのを思い出し、
大山迄行かずとも、帰り道の板橋駅近くに「板橋店」が在ると言うので、
正午前だが、流石は人気店の様で、店内に先客一名、店外に持ち帰りの待ち。
此れならば突撃しようと、引き戸を開けて中に入り、暫し待機。
待っている間に注文をし、五分強で席が空き、念願のヨッコイショーイチ…。
…カウンター席に座るや否や、発注していたルービーが配膳される。
昨夜から何も食べて居らず、硫酸バリウムを飲んだ後には消毒しないと。
売る程余っている代休を宛がっているので、心置き無く正午前から飲酒。
手酌で注ぎ、硫酸バリウムとは違い、すんなりと入って行く。
炭酸の膨満感は造影剤に似ているが…。
…来た来た、此れだ此れだ。
此の数年、事有る毎に思い出され、頂いてみたいと思っていたのは。
「からし焼肉」も食べたいし、「かにクリームコロッケ」も食べたい。
其れならば、「からし焼肉＆カニクリームコロッケ」と言うのも有るのだが、
矢張り、「からし焼肉」はたっぷり、たんまりと、「大」で頂きたいので、
便利な単品で、「サイドコロッケ」と言うのが有り、其れを発注してしまう。
先ずは御飯に、卓上の胡麻塩を振り掛けてから頂こう。
恐らく、十八、九年振りに頂くであろう、先ずは「からし焼肉」から。
要は、大蒜を効かせ、塩胡椒で味付けした豚肉の炒め物だ。
懐かしさを持って頂けば、おおっ、大蒜のパンチがガツンと感じられ、
そして、黒胡椒のヒリリとした爽やかな辛味が駆け抜け、全体は、
絶妙としか言い様が無い塩加減で纏められており、悶絶してしまいそうだ。
生の大蒜を撹拌機に掛け、水を加え、液状にする事で、満遍無く、
確りと全体に味が馴染み、行き渡ると言う。
そして、塩、二種類を調合した旨味調味料で炒め、料理酒で香り付けし、
最後に黒胡椒をたっぷり掛けて仕上げると言う逸品。
豚肉は脂身がプルンとして、其の甘味も加わり、しっとり感も有って最高だ。
胡麻塩を振り掛けた白米の塩気とも最高に絡み合う。
最近、年老いて来たからか、此の世で一番旨い物は、絶妙な塩加減、
簡素な味付けの塩焼き、塩炒めではないかと思っている。
まあ、焼き鳥に関してはタレ派と言うのは譲らないが…。
付け合わせはと言うと、赤茄子、甘藍の千切り、水菜等の野菜に、
侮ってはいけないのがカレー味のゲッティーだ。
単品で九〇円で提供されるだけあり、立派なメニューの一つ。
太麺で確りとした味付けで、大蒜、塩、旨味調味料、人造バターで拵えるとか。
さて、もう一方の主役、「かにクリームコロッケ」だ。
個人的に、じゃが芋のコロッケには余り惹かれないが、如何言う訳だか、
蟹クリームコロッケには魅せられてしまうが、滅多に頂かない。
稀少価値が有ると言うのも理由の一つだろうか。
箸で千切り、一口頬張れば、シャオっと言う軽い衣の揚がり具合で、
中からはトロっとした、ロイシーなテレレが顔を覗かせる。
卓上のソースは掛けず、端から付いているタルタルソースで頂く。
より円やかさが増し、何とも倖せな心持ちにして呉れる。
嗚呼、何と最高な、ラーメン以外の昼御飯なのだろう。
「池袋店」は駅の反対側だが、来年からは通えそうかしら…。
