◆「塩そば専門店 桑ばら」【池袋】
◎「生海苔そば」九五〇円
…昨日。
火曜日から新部署に着任し、引き継ぎも徐々に本格化し、分からない事だらけ。
此の日も朝から、コンピューターと睨めっこし、全く門外漢の分野、
何が何だか分からない文字列に悪戦苦闘し、目をしばしばさせて仕事する。
コンタクトレンズの調子も悪いし、もう、目が真っ赤っかだわさ。
十三時半を廻り、此の日も独り、昼御飯を摂りに池袋の街へ。
「らーめん つけめん 鶏の穴」で限定ラーメンも頂き、選択肢は少ない。
不意に、十一月三〇日に「裏そば」の「牡蠣の中華そば」を頂いた此方の、
此の日の「裏そば」は何かと検索すると、「生海苔そば」と言う。
石蓴が好きな僕としては、此れは良いじゃないのさ。
現場に急行し、行列が形成されていない事を確認し、店外の券売機と対峙。
其の上の白板には「本日の裏そば! ◎生海苔そば ¥950」と書かれている。
パッと眺め、九五〇円の釦が無く、八五〇円の「塩玉そば」の食券を購入し、
一〇〇円硬貨を握り締めて店内に入り、食券と一〇〇円硬貨を手渡し、
「裏そばで」と御願いし、カウンター席にヨッコイショーイチ。
屋台の様な感じで、出入口が全開なので、冬場は外気が冷たくて寒い。
冷水を受け取りグイッと呷り、店内は客は他に一名で、厨房内はと言うと、
店主氏と女性店員氏の二人体制で、ダ・カーポと同じ編成。
然し、店内の音楽は「野に咲く花のように」ではなく、ももいろクローバーZ。
漢字で表記するなら、「桃色白詰草乙」とでも言うのだろうか。
何も、漢字表記にする必要は無いのだが…。
そうこうしていると、五分足らずでラーメンが出来上がった様だ。
おおっ、何とも鮮やかで、目にも愉しく優しい佇まい。
生海苔の緑が、霞ヶ浦の青粉を髣髴とさせ、いざ頂こうではないか。
先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。
此方は以前は「塩そば専門店 まるきゅうらあめん」、今はと言うと、
「塩そば専門店 桑ばら」と、塩ラーメン一本と言う潔さで、
店頭の黒板には「当店 シオソバしかございません」と言い放つ程。
大山地鶏を基本としたスープに、塩ダレではなく蒙古と安天須の岩塩を用いた、
透明度の高いスープと言うのが謳い文句だが、其処に生海苔の風味が加わり、
そして、「当店のスープはしょっぱいです」と貼り紙に有る通り、
高血圧患者には安心する塩気が押し寄せ、キリっと引き締まっている。
麺は、通常の「塩そば」が細麺だが、前回の「牡蠣の中華そば」同様に、
平打ちの中太麺で、生海苔との絡みも良く、スルスルと入って行く。
ラーメンヲタクではないので、知る由も無いが…。
其れにしても、生海苔の風味が実に馨しくて素敵だ。
調べてみると、石蓴は「緑藻類アオサ目アオサ属の海藻」と言い、
海苔は「ウシケノリ科アマノリ属の紅藻」と言うから、厳密には別なのだろう。
叉焼は、通常の「塩そば」とは異なり、バラ肉を巻いた物。
適度な厚味も有り、味付けは控え目だが、トロンと蕩け、ホロっと解れる。
他には、何だろう、捏ねの様な、軟骨の様な、小さな団子状の物が数個入る。
生姜の風味が感じられ、独特な食感を醸し出している。
最後は残して置いた卵黄を蓮華で掬って口に入れ、生海苔たっぷりのプースーを、
グイッと飲み干し、口内で卵黄を割り、生海苔と絡ませて御馳走様。
値は張るが、不慣れな仕事の合間の息抜きに成る、好適な一杯だ。