…一昨日。
此の三連休、別段、何の行事も無く、愉しい事も無いので、
せめて食事位は愉しみたいと、胃の調子が悪いと言うのに、如何も、
牛とデープキッス、熱いヴェーゼを交わしたい欲求が抑えられない。
少し歩いて、其の昔、何度と無く御邪魔した此方へ出掛けてみよう。
今は無き「大宮東口店」に御邪魔したのが二〇〇七年六月三〇日。
「本店」はと言うと、恐らく、十二年振りだろうか。
店の前は何度も自動車で通るのだが、最寄り駅から遠く、歩くにも容易じゃなく、
肉と一緒に酒が呑みたい僕からしたら、如何しても疎遠に成ってしまっていた。
十九時半過ぎに到着すれば、結構な数の客で賑わっているが、
当時の店長氏が未だ居り、席へと案内して呉れる。
…席に着き、先ずは献立表を眺める。
此のわくわく感が堪らず、彼是と肉の算段をし乍ら、先ずはルービーを発注。
三種類の銘柄の中から、まあ、何でも良いのだが、「一番搾り」で御願いする。
クーニーに行く前に、先ずは景気付けの喉湿し。
グイッと呷り、二〇分強歩いて火照った身体を冷却する。
…先ずは、此の日の御薦めの中から、魅惑的な此れを発注。
いやはや、此の赤々とした和牛の心の臓、瑞々しくて素晴らしい。
テレレに浸けて頬張れば、口内にひんやりとした冷たさを感じ、
噛むとムチッとした弾力と、さっくりとした歯切れの良さ。
あっさりとした味わいで、流石は心の臓だけあり、生前、能く動いていたので、
引き締まった弾性を感じ、出出しから上々だ。
…箸休めとして、朝鮮漬けも頂いてみよう。
辛過ぎず、熟成、発酵した甘味も程好く感じられ、仕切り直しに良い。
最近、豚キムチ炒めを食べたい欲求に襲われる事が有るが、
此れで拵えたら、量販店の安価な朝鮮漬けとは違って旨いだろうな。
…さて、最近は偶に、眩暈の様なふらつきを覚える事が有るので、
確りと鉄分を充填しないといけないなと思い、此れに白羽の矢が立つ。
其の昔、此方では「黒毛和牛のレバ刺」を提供しており、
禁止される直前に「大宮東口店」に駆け込むも、既に閉店ガラガラで、
違う店舗に挿げ替わっていたのを思い出す。
献立表には「こちらの商品は加熱してお召し上がり下さい」としてある。
今日日、其れは当たり前で、重々心得ている。
テレレは勿論、「ニンニク」、「ゴマ」、「しょうが」から「ゴマ」で。
針生姜を巻いて頂けば、口内に拡がる新鮮な鉄分の旨味と、ぷるんと、
コリッとした角の確りとした食感が伝わり、嗚呼、無駄に生きていて良かった…。
…もう、こう成ると止まらなくなる。
二杯目の麦酒を発注し、続いては念願の、牛と熱いヴェーゼを交わす。
テレレは「ニンニク」で御願いする。
長年恋焦がれた恋人の様に、舌と舌が濃密に絡み合い、唾液が分泌される…。
ねっとりと濃厚で、程好い脂の乗りが見事で、食感も肉肉しくて良い。
口内にまったりとした後味、余韻が残り、情事の後に逆上せたかの様だ。
…畳み掛ける様に、牛とのデープキッスを続ける。
下拵えが為されていたが、此方のは其の儘、分厚い物がドンと並べられている。
牛の舌本来の味を味わうと言う寸法で、味付けは「岩塩」と「塩」が選択出来、
「岩塩」で御願いすれば、別で岩塩が供され、其れを振り掛けて炙る。
最初は半生焼き程度で、卓上の檸檬汁で頂けば、中はねっとりと濃厚だ。
今度は能く焼きで頂けば、肉の上で細やかな脂がヂヴヂヴと踊っており、
食感はと言うと、外はカリッとして、さっくりと歯が入る。
…個人的に、焼肉でカルビやロースは無くても何ら構わないが、
腹身が無いのは嫌なので、必ず発注している。
献立表には「ハラミ」、「牛サガリ」、「つぼ漬厚切りハラミ」、
「和牛ハラミ」、「和牛上ハラミ」と五種類有り、「和牛ハラミ」を発注。
そして、女中さんが「ハラミです」と配膳されたのは、如何見ても安っぽい。
肉の種類が「ハラミです」と言ったのではなく、献立名が「ハラミ」と言う事か。
そろそろ腹も一杯なので、安い肉で十分だ。
「半ライス」も発注し、「酎ハイ」と共に頂けば、デヴも満足。
会計では「ハラミ」で付いていたのでホッと一安心…。