◎「てっぱんステーキランチ（１４０）」一六〇九円
…昨晩は会合と新年会を掛け持ちし、〆に「環七土佐っ子ラーメン」で、
背脂ヴィッチヴィチの「土佐っ子チャーシューメン」を啜ると言う暴挙の後、
午前零時半過ぎに、電車を乗り過ごす事も無く帰宅すると言う駄目さ加減。
蛇の大群から逃げる海蜥蜴の映像を観乍ら、迫り来る休み明けの日常から、
命辛辛、現実逃避する自分を海蜥蜴に重ね合わせ、何だか心がぞみぞみする。
夜中に何をしているのだろうか…。
久し振りに外で酒を呑み、暴力的なラーメンで〆た身体的損傷は計り知れず、
胸焼けと胃凭れに加え、悪夢に魘され、朝は一〇時に漸く寝床から這い出す。
風呂に入って身を清め、午前中は極めて自堕落に、非生産的に過ごし、
十二時半を廻り、やっとこさっとこ動き出し、買い物がてら昼御飯を摂ろう。
体調としては、あっさり、さっぱりと冷たい蕎麦でも手繰りたい心持ちだが、
明日からの一週間を乗り切るには弱く、此処はガツンとクーニーで立ち向かおう。
焼き肉も良いのだが、血の滴る様なビフテキをいざ喰らわん。
ビフテキと言えば、此方が最も優れている。
十三時過ぎに到着すれば、先客四組の待ちの様で、呼ばれる迄、ヂッと待つ。
十五分程で席に案内され、ヨッコラセーノセーノセーノセと。
一応は献立表を捲るが、此方で頂く物は此れと決まっている。
前回、一〇月二十一日同様、「２４０」は自重し、「１４０」で十分。
此れを若焼き、「宮のたれ」、白米で発注し、プースーを取りに立つ。
勿論、コーンポタージュ、玉蜀黍汁さえ有れば宜しい。
御替わりに立ち、二杯目を頂いていると、ヂウヂウと音を立てた鉄板が、
しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃんと、大五郎宜しく、手押し車に乗せられ、
十五分弱で配膳され、「宮のたれ」をぶっ掛けて呉れると言うので御願いする。
「２４０」に比べたら、一〇〇瓦も少ないが、今日の僕には十分な量。
肉切りと肉刺しを不器用に駆使して切り分けたら、さあ、頂こう。
四〇年前の創業時から有ると言う此の肉の部位はハンキングテンダーと言う事で、
僕の愛する腹身、横隔膜からぶら下がっている「さがり」。
軟らかい赤身肉と謳う通り、適度な噛み応えと軟らかさ、肉肉しさを堪能する。
しっとりとした口当たりで、此れを噛み締め、旨味が染み出して来る。
牛脂を注入した成型肉の「宮ロース」では味わえない肉質から伝わる旨さだ。
又、若焼きなので、中は赤々として、肉襞を舌で味わうかの様な質感が卑猥だ。
さて、テレレはと言うと、国際味覚審査機構の優秀味覚賞の二つ星受賞と言う、
唯一無二の絶対的な旨さの「宮のたれ」で、此れで頂かないと言うのは、
厠に入って尻を拭かずに出る様なもので、他に「オニオンソース」、
「デミグラス」、「ガーリックトマトソース」、「グレービーソース」、
「ステーキ醤油」と有るが、「宮のたれ」で頂かないと言う馬鹿が居るのか。
まあ、好き好きなので知ったこっちゃ無いが、僕は此れさえ有れば良い。
「宮のたれ」は生玉葱の風味を最大限に活かす為、非加熱製法に依り、
長時間じっくりと冷蔵熟成して作られた生テレレで、補助原料の醤油、
酢を含め、保存料を全く使用せず、 品質を保つ為の加熱処理をしておらず、
原材料は玉葱、大蒜、醤油、酢のみと、極めて簡素なのに美味しく、
約三週間も熟成されると言う自慢の逸品で、市販もされているのが有難い。
此の肉とテレレを味わえば、必然的に白米を欲し、卓上の岩塩を削って塗し、
此れを頬張れば、塩気と旨味も加わり、もう、旨いの何の。
明日からの一週間、少しばかり頑張れそうな気がして来る。
御飯の御替わりを軽めに頂き、付け合わせの馬鈴薯、ポリタンも平らげ、
プクマンで退店し、さあ、後は帰って就寝の準備に取り掛かるだけだな…。
