…昨晩。
折角の三連休と言うのに、気分は浮かないし、背中の痛みが激しいし、
早くもサザエさん症候群が重苦しく、略、寝て過ごしている。
昨日は流石に肩凝りと背中の痛みが酷いので、今流行りの按摩は呼ばず、
自ら足を運んで、三〇代の女性ではなく、五〇代の男性に施術して貰う。
普通、利き手側が凝ったり、張ったりするらしいが、僕は首から背中に掛けて、
特に肩甲骨の周り、左右両方がガッチガチらしく、揉み解すのに難儀した様だ。
上半身だけすっきりした後は、帰宅して「笑点」を観て極めて自堕落に過ごす。
十八時を廻り、徐に動き出し、宮原へと歩いて出掛ける。
三連休明けからの過酷な勤務を前に、せめてもの慰みに、少し頑張れそうな物を。
そう言う時は肉に限るわね…。
◎「ヱビス樽生」五二九円
…予約して置いたので、すんなりと席に案内されてヨッコイショーイチ。
店内は餓鬼を連れた、幸せを装った家族連れが囂しく、参ってしまうわね。
餓鬼の内からこんな旨い肉を喰わせて如何するのか。
「安楽亭」だって大御馳走と言うのに、先行きが思い遣られるな…。
余所は兎も角、自分の喉を潤す事に専念しよう。
苦味の効いた冷たいルービーは、暖かい室内で呷るのは格別に旨い。
◎「センマイ刺し」七四五円
…さて、初っ端に酒の摘みとして良いのが、牛の第三胃袋。
「千枚」が由来とも言われ、胃壁が襞の様に幾層にも重なった、
独特な形をしていると言う通り、何とも卑猥で、コリコリとした肉襞だ。
酢味噌に唐辛子味噌を加えた物を塗して頂く。
臭味も丸で無く、少しザラっとした舌触りと歯応えが醍醐味だ。
◎「ナムル盛り」六三七円
…箸休めに和え物も発注して置く。
菠薐草、膾、薇、萌やしの四種類。
まあ、特筆すべき点は無いが、目先を変え、口内を再起動するには良い。
◎「厚切り上タン塩」一七一七円
…さて、さあ肉だ。
先鋒、核弾頭は牛タンに限る。
然も、通常の「上タン塩盛り」ではなく、分厚い此れが良い。
謳い文句に、食感の良い厚切りの上タンで、焼き上がりを早くする為、
隠し包丁を入れているとの事で、炭火の上で丹念に焼き上げて行く。
徐々に花が咲く様に切り込みが開き、表面は細かい脂の気泡がジヴジヴと、
音を立て乍ら踊る様で、搾った檸檬を塗して頬張れば、何!?此の旨さは。
思わず、嬉しくて座り小便して馬鹿に成って、明後日の方向に飛んで行きそう。
牛とデープキッスを交わすのは、此れは最高だわね。
軟らかくも有り、さっくりとした快い歯触りも有り、肉肉しさも有る。
◎「極上ハラミ」一七一七円
…一頻り「厚切り上タン塩」の旨さに悶絶し、悶え死に寸前に成ったが、
何とか、三途の川から生還し、今度は「極上ハラミ」に取り掛かろう。
此れも、此方に御邪魔したら欠かせない逸品。
霜降りで軟らかい和牛の腹身との事で、焼き過ぎない様に慎重に炙る。
今度は卓上のタレで頂くが、口に入れた途端、其の軟らかさに打ちのめされる。
嗚呼、一々旨い。
個人的に焼肉では、タンと腹身が有れば十分で、カルビよりも好きだ。
牛は凄いな。
◎「上タン塩盛り」一三九三円
…厚切りに続いて、通常のも頂いて置こう。
タン下、タン先等、硬い部分を切除したと言う、良い場所らしい。
見るからに、何とも卑猥で、生前、舌技に優れた牛だった事だろう…。
焼き過ぎず、かと言って、若焼きではなく、絶妙な焼き具合を見極める。
今年に入って、一番集中した瞬間でもあった。
厚味が違う分、「厚切り上タン塩」とは異なる食感で、此れも又、頗る旨い。
僕の余計な拙い言葉は要らないな。
◎「にんにく揚げ」五二九円
…心身共に御疲れ気味なので、精を付けないといけない。
と来れば、大蒜が一番だ。
火の通った大蒜はホクホクして馬鈴薯の様で、何粒でも頂けてしまう。
食べ過ぎたら鼻血が出るのだろうか…。
◎「中落ちカルビ」一三九三円
…さて、そろそろ〆、大團圓へと向かおう。
御飯の御数にと、滅多に発注しないカルビを頂こう。
通常の「カルビ」ではなく、豪勢に「中落ちカルビ」にしてみよう。
骨と骨の間に有る旨味の詰まった部位との事で、此れ又、綺麗な霜降り。
別名、下駄カルビとも言われ、牛の肋骨に付着した肉で、赤身、
脂身が層になっているバラ肉で、脂が多く肉の味も濃厚でこってりしている。
軟らかさは勿論、肉肉しさ、ムチッとした感じも有り、おぢさん悶絶…。
◎「ツナコーンサラダ」七四五円
…ちょいと、偶には趣きを変えてみよう。
「かしら屋」では必ず頂く「ツナとコーンサラダ」だが、此方にも有る様だ。
嬉しい事に、茹で玉子が一個分入っており、他には萵苣、蕃茄、玉蜀黍、
刻み玉葱、鬢長鮪の油漬けが入り、「オリジナルマヨドレッシング」と言う。
献立表には餓鬼に御薦めなんて書いてあるが、所詮、おっさんの味覚なんて、
餓鬼の頃から変わらないのかも知れないわね。
◎「ビビンバ」七四五円
…途中、「ライス(小)」を頂いたが、改めて、仕切り直しで、本格的に〆る。
世の中では、此の手の混ぜ飯は石焼きが持て囃されているが、
女子供ではあるまいし、男は焼かれていない方が良い。
初っ端の「ナムル盛り」の四種類の和え物に、そぼろ、刻み海苔が加わり、
此れ等をざっくりと、全体が混ざり過ぎない様に撹拌する。
「中落ちカルビ」の脂で口内を潤したら、此の混ぜ飯を掻っ込む。
問答無用の美味しさだ。
麦酒一杯、酎ハイ四杯を頂き、プクマンで寒い中を歩いて帰り、酔いが醒める…。