…気分が浮かないとは言え、三連休は三連休。
然し、其れも無慈悲にも、否応無しに終わろうとしており、何とも残酷だ。
背中の痛みは相変わらずで、風邪っ引きの岡っ引きの様で、咳が止まらず、
熟睡出来る筈も無いので、当然、朝は早起き出来ず、九時に漸く這い出る。
風呂に入って身を清め、午前中は極めて自堕落に、非生産的に過ごす。
十一時半に成り、昼御飯と買い出しも兼ね、早目に動き出す。
早く帰って寝ないと、明日からは新聞配達員並みに早起きしないといけないので。
三連休最後の昼餐に選んだのは、此方の叉焼を頂きたい欲求が此処最近、
妙に高まっているので、連休中で一番の遠出、北本へと北上してみる。
十二時十五分に到着すれば、何てこったい、店外に待ちが発生している。
駐車場には空きが有り、事無きを得たが、店内で名前を記入して外で待つ。
鉛色の寒空の下、十五分程、ゔるゔると震えて待ち、漸くヨッコイショーイチ。
…厨房内は何時もは三、四人体制だが、御店主と女性店員氏二人のみと少なく、
昼時の書き入れ時で、獅子てんや・瀬戸わんや、天手古舞いの忙しさ。
丼の上げ下げ、会計、受注、待ち客の案内が滞っており、容易じゃ無さげだ。
今回こそは「おつまみチャーシュー」を頂こうと思ったが、そんな状況に無く、
何時も通り、麦味の炭酸水に白麺麻を発注し、ラーメン迄の繫ぎにする。
麦味の何だかもやもやする飲料を手酌で呷り、摘みに麺麻を食む。
白出汁で炊いてあり、あっさりしてほんのり甘く、肉厚で美味しい麺麻、
そう謳う通り、シャキシャキと瑞々しく、甘味が有り、すっかりお気に入り。
…麦味の炭酸水と白麺麻で繫ぐも、今日は如何にも時間を要しそうだ。
まあ、仕事の忙しさと言うのは致し方無いものなので、ヂッと待とう。
僕の前に四組八杯程の調理が溜まっていた様で、じっくりと腰を落ち着ける。
三〇分弱、軈て訪れる至福の時を夢見てヂッと待ち、遂に配膳される。
前回の昨年七月七日は叉焼が売り切れで、「塩ワンタンメン」で甘んじたので、
前々回の四月二十一日以来、約一〇ヶ月振りの「塩チャーシューメン」。
叉焼がでろりと、丸で、夏場に伸び切った爺の貴重品袋の様に寝そべっている。
俄然色めき立ち、先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。
塩ダレは沖縄は粟国島の自然海塩と言う拘りで、迸る旨味に舌を撃ち抜かれる。
優しい味わい、旨味がじんわりと浮かび上がって来て、滋味が満ち溢れている。
煌めく美しい淡麗スープに魅了される。
先代が師事したラーメンの鬼・佐野 実氏の教えが確りと受け継がれている。
麺はと言うと、店舗裏の「麺工房」で打たれたと思しき自家製麺。
此れ又、小麦の風味がふんわりと感じられる、しなやかで流麗な啜り心地で、
喉越しが良く、スルスル入って行き、絹の様な風合いの麺。
口内でぷりっと躍るかの様な感覚で、揚げ葱の香ばしさも持ち上げて来る。
一六五瓦と言う量が、貴重で、啜るのが勿体無く感じられる。
さて、主役、御目当ての叉焼はと言うと、箸で突けば、いとも簡単に崩れる。
左側の小さ目の物は、赤身が主体で、口の中でほろっと解れて居なくなる。
右側の巨大な夏場に伸び切った爺のタマーキン袋の様な大きさの叉焼は、
茹でタンを思わせる食べ出、食感で、程好く脂身も入り、直ぐに蕩けてしまう。
軟らかさを得て、口内の滞在時間も僅かに喉元を転げ落ちて行く。
途中、残して置いた白麺麻も投入し、温めた状態でも堪能する。
具は他に、通常の麺麻、小松菜、関東葱。
最後はプースーを全て飲み干し、会計を済ませ、満足して御馳走様。
次回は、塩のプースーに、素揚げした富山の白海老が入って海老の風味が薫り、
白麺麻も標準装備と言う「富山ホワイトチャーシューメン」に初挑戦も良かろう。