◆「ハンバーグの店 ベア」【蔵前】
◎「ハンバーグ+カキフライ」九五〇円
…水曜日。
今週も何とか、命辛辛、週末の休日に漕ぎ着けた感じ。
業務自体は大きな事故も無く、平穏無事に乗り切ったが、如何せん、
三週間経つが、未だに通勤、職場環境に慣れず、余分な疲労感が強い。
昼休憩も然りで、選択肢が少なく、現実逃避をする為に浅草迄歩けば、
休憩時間の半分は無くなり、ゆっくりと寛ぐ時間は僅かで参る…。
さて、話は遡って、真ん中もっこり水曜日。
此の日も十三時過ぎに、花粉たっぷりの外気を吸いに出る。
月曜日、火曜日と拉麺だったので、偶には違う物を頂いてみようかしら。
そんな気紛れから、目星を付けていた此方に、いざ突撃。
カランコロンカランと、扉を開けて中に入ると、席は止まり木のみ十一席。
何とか空席が有り、奥から三番目へと促されてヨッコイショーイチ。
透かさず献立表が差し出され、暫し、グッと見入る。
店名の通り、ハンバーグが主力商品の様だが、洋食の揚げ物、焼き物、
咖喱と、一通りの物は揃っており、何だか嬉しくなってしまう。
一〇月から三月の期間限定で牡蠣フライも有り、良し、決定。
「ハンバーグ+カキフライ」と言う、蠱惑的な組み合わせを発注する。
束の間の独りに成れる時間に、ホッと一息、薄ぼんやりとしてヂッと待つ。
厨房ではおやっさんが調理を行い、女中さんが調理補助と洗い物をし、
男性店員氏が会計で、帰る客に「有難~う」とざっくばらんな接客。
其れを嫌がる人間も居るだろうが、まあ、人夫々、仕事に向き合う姿勢も様々だ。
そうこうして居ると、一〇分程で配膳される。
嗚呼、見るからに正しい、正統派の洋食だ。
先ずは箸でハンバーグから切り分ければ、肉汁が溢れ出ると言う型ではなく、
昔乍らのと言うか、家庭的と言うか、素朴だが、こんがり香ばしく、
粗微塵のショリショリした玉葱の食感が軽快で、挽き肉の粒子も感じられる。
テレレはデミグラスソースと思いきや、蕃茄醤の味が強めに効いており、
蕃茄の酸味が心地好く、此れは此れで、御飯が進む味わいだ。
牡蠣フライは三粒盛られ、其の上にはタルタルソースが掛かっている。
此れに卓上の中濃ソースをぶっ掛け、檸檬を搾り、練り辛子を塗して齧る。
シャオっと軽い歯触りの後、中から夥しい牡蠣の越幾斯、旨味が溢れ出す。
広島県産の牡蠣と言い、火が入り過ぎておらず、半生に近い絶妙の揚げ加減。
其れ故、海の牛乳たる所以を存分に味わえる、正に冬の味覚と言って良い。
御飯が捗って仕方無いが、欲を言えば、岩塩を少し振り掛けたい。
牡蠣フライの下には、洋食の付け合わせの王様、太麺の那波里タン。
生野菜には調理汁がぶっ掛けられており、ハンバーグのテレレも染みて来る。
確りと平らげ、会計をし、「有難~う」と初訪店だが送り出されて退店。
いやはや、次は何を頂こうかと考える行為が愉しい…。