◆「宮原元気酒場 もつ焼 エビちゃん別館」【宮原】
…早くも、もう、土曜日の晩だ。
もう、僕に残された時間は僅かで、サザエさん症候群が容赦無く、
じわりじわりと心身を蝕んでおり、有効な治療法は確立されていない…。
明日は尚更、のた打ち回る様な病状だろうから、今日の内に愉しみは済ませよう。
休日で何とか愉しめるのは土曜日の晩だけだが、如何せん、愉しむ気力が無い…。
外で呑もうにも、彼是と考え始めると、憂さ晴らしに行く筈なのに、
余計に憂さが鬱積しそうで、中々、外に出る踏ん切りがつかない。
十九時前に、精一杯の気力を振り絞り、何とか外に出て、宮原駅方面に歩き出す。
向かう先は、久し振りに肉刺し的な物を頂こうと思い立ったは良いが、
「大宮酒場 もつ焼きエビス参」へ電車に乗車して出掛ける元気は丸で無いので、
歩いて、昨年九月八日以来、七ヶ月振りの此方へ二度目の訪店…。
◎「ホッピーセット(白)」四九〇円
…えっちらおっちら歩いて、何とか、宮原駅東口に辿り着き、
前回の若い綺麗な女中さんを目当てに、此方の扉を開けて中に入る。
独りぼっちの旨を伝え、止まり木にヨッコイショーイチするが、
件の女中さんの姿は無く、代わりに、少しおへちゃな女中さんが居るが、
若いと言う其れだけで、おぢさんは満足だ…。
透かさず、冷めた仕草で熱く見て、ピーホツをロイシーで発注。
程好い配分で作成し、グイっと呷れば、久し振りの外の酒の味にクラクラする。
早見優だったら、誘惑光線クラッ!
御通しは大韓民国海苔だが、昨今の情勢を鑑みると、白子海苔が良かろう…。
◎「レバ刺し」四八〇円+「タン刺し」五五〇円+「ハラミ刺し」五八〇円
…一頻り、燃料が充填されて落ち着いたら、主役の肉刺し的な物を発注。
二年前、蟹工船に絶賛乗船中の頃、「大宮酒場 もつ焼きエビス参」に御邪魔し、
日常の激しい疲労の所為で悪酔いし、記憶を失くして会計せずに帰ったり、
駅で寝入り、二週連続で携帯電話を紛失したり、思い出したくない記憶ばかり…。
勿論、次回訪店時にきっちりと、耳を揃えて会計したので誤解無き様。
以前の様に、外で呑む元気と勇気が有れば、頻繁に御邪魔したいのだが、
こうして、年に一度、有りと有らゆる気力を結集しないと来られないのが残念。
過去、さんざっぱら頂いた、低温調理済みの「レバ刺し」は、
胡麻油と塩のテレレで頂けば、トロンと蕩ける食感と、肝臓特有の風味が良い。
豚とデープキッスの「タン刺し」は、コリコリとした歯応えが秀逸で、
此方では「ハツ刺し」推しの様だが、個人的には豚のベロが好き。
「ハラミ刺し」は言わずもがなの横隔膜で、むっちりとした食感が印象的。
◎「W炙ハラミ」二八〇円
…ピーホツも三杯呷り、二回目の発注を済ませ、序に摘みも発注。
「スタレバ」改め「特レバー」と並び、手間暇が掛かり、原価が嵩むと言う、
「W炙ハラミ」なる物を発注してみる。
Wけんじ、Wヤング、Wコロンは知っているが、「W炙ハラミ」は初めて…。
テレレと一緒に出て来たのは、若焼きの豚の腹身の様で、赤々としている。
此れを齧れば、むっちりとした食感で、肉の卑猥な質感を堪能出来る。
◎「梅水晶」五〇〇円
…ピーホツも二回転目、五杯目も半ばに差し掛かり、そろそろ仕上げに入る。
「特レバー」も大いに惹かれるが、以前よりも年老いて、胃が付いて行けない。
と言う訳で、さっぱりとしつつも、物足り無さを感じない物を発注。
酒呑みには御馴染みの、コリコリとした食感の鮫の軟骨に飛び子が入り、
其れを梅肉で和えた物で、食感が心地好く、ちびちびと遣れるのが良い。
ピーホツ六杯を頂き、周囲の喧騒に疲労し乍ら、二十一時半過ぎに退店…。