◆「麺屋 六文銭」【宮原】
◎「もりそば」七八〇円+「味付け玉子」一一〇円
…昨晩。
すっかり外で呑む事が億劫で、煩わしく感じる様に成ってからと言うもの、
家に籠って、気兼ね無く、のんびりと飲る事の良さを覚えたが、
此の日は酒の肴を購入して居らず、家にも食糧が無い為、仕方無く外へ。
休日の晩に外に居る事なんて、月に一、二度有るか無いか程度だろう…。
以前は酒場や居酒屋で呑む事が好きだったのに、いやはや、もう駄目だわね。
「宮原元気酒場 もつ焼 エビちゃん別館」で肉刺し的な物を肴に、
ホッピー六杯を呷り、大人しく帰ろうかなと思うも、悪い虫が騒ぎ出す。
一応、痩せようと努力しているので、躊躇い、逡巡してみるも、
最近、改めて此方の旨さを再確認している折なので、心がぐらりと揺らぐ。
気付けば、宮原駅の構内を渡り、反対口に向かっている駄目おぢさん…。
二十一時半に引き戸を開けて中に入れば、先客一名。
先ずは券売機で食券を購入するが、仕上げの「サッポロラガー中瓶」も、
絶品の「もりチャーシュー」も、パンチの効いた「青森生にんにく」も我慢。
麺の量も並盛りで、せめてもの抵抗に「味付け玉子」を付ける。
いや~、堪え性が今頃に成って出て来たのかしら…。
食券を女将さんに手渡し、冷水を汲み、止まり木にヨッコイショーイチ。
酔いを醒ます様に、冷水を呷り、茹で時間に十二分を要するのでヂッと待つ。
店内はレディオが流れ、超短波放送の周波数七十九.五、FM埼玉。
頗る運が悪く、半島系を礼賛する番組の様で、此の御時世に、
其の様な売国奴番組が有る事に驚きで、胸糞の悪さは否めない。
個人的に、レディオは中波放送の周波数一二四二に限る。
さて、十五分弱で女将さんからつけ麺を配膳して貰い、僕の気分も落ち着く。
そんな番組は耳から閉め出し、つけ麺に専念しよう。
麺の上の叉焼、茹で野菜、海苔をつけ汁に移したら、後は手繰って啜るだけ。
「東池袋大勝軒」の教えを受け継ぐ此の味は、甘酸っぱさが心地好く、
其れで居て、薄っぺらい味わいではなく、どっしりとした動物系の出汁が効き、
コクが有って円やかで、国産素材のみを厳選した完全無化調の優しさも有る。
動物系の出汁は、豚背骨、鶏胴ガラ、拳骨、鶏油、豚背脂、豚頭骨、鶏足、
鶏頭から炊き出され、円やかでコクの有る味わいに仕上がっている。
二〇一六年の初めに、圧力鍋でプースーを拵える様になった影響で、
白濁し、随分と円やかに成り過ぎたが、今や、全盛期の大行列だった頃の味だ。
麺は、旧「六文銭」、現「フレンチバル セゾニエ」で打たれた自家製麺。
昨年春頃から、既製の全粒粉から、自家製の全粒粉に変えたとの事で、
玄小麦を仕入れ、より香ばしくする為に炒り、石臼挽きしていると言う拘り。
澱粉等の混ぜ粉を使い、茹で時間を短縮し、もちもち感を出す事も出来るが、
小麦本来の香り、風味が損なわれるので其れをせず、麺を口に入れた瞬間、
広がる小麦本来の香りと風味全てを引き出す為、北海道産一〇割で、
全粒粉を始め、四種類を独自に配合していると言い、麺自体に旨味が有る。
勿論、腰や張り、弾力が秀逸で、艶やかで瑞々しさが迸っている。
具の叉焼は二切れ入り、赤身の部位が多目のむっちりとした食感の物。
「もりチャーシュー」の巨大で蕩ける旨さの炙り叉焼の比ではないが、
此れは此れで、あっさり目だが、肉質の良さを窺い知るには十分。
味付け玉子は齧れば黄身がドピュっと飛び出し、御手本の様な出来栄え。
具は他に萌やしと甘藍を茹でた物、海苔、葱。
最後は勿論、此の甘酸っぱい旨味を残らず飲み干し、満足感に浸る。
嗚呼、矢張り、宮原を代表する味で、格別だな。