◆「麺屋 六文銭」【宮原】
…昨日。
一〇連休に突入するも、サザエさん症候群を患い始めており、
何処と無く、心がぞみぞみと、胸騒ぎがして、据わりが悪い気がしないでもない。
初日の午前中はホスピタり、体調を整え、正午も廻ったので動き出す。
初っ端の昼餐は、麦酒を呷り乍ら、旨いつけ麺を啜ろうと試みる。
運動も兼ねて、歩いて此方へと向かう。
同じく昼時に御邪魔した前々回は、満席で暫し待つ展開だったが、
硝子戸を開けて中に入ると、未だ時間が早いのか、先客は数名で一安心。
透かさず券売機で一通り食券を購入し、冷水を汲み、ヨッコイショーイチ。
◎「サッポロラガー中瓶」五五〇円
…女将さんに食券を手渡し、今回はすんなりと瓶麦酒と洋杯を受け取る。
手酌で注ぎ、歩いて火照った身体を冷却し、一週間の疲労を癒し、
一〇連休の幕開けを祝い、グイっと呷る。
一八七七年に発売された、現存する日本最古の麦酒銘柄ならではの安心感。
熱処理麦酒の確りとした厚味の有る味わいが特徴で、苦味が心地好い。
…一頻り、土曜日の昼間からの飲酒を愉しみ、何とも良い心持ち。
半分程を飲った所で、女将さんがつけ麺を配膳して呉れる。
「青森生にんにく」ではなく、他の客の「青ねぎ」を出されたのは御愛嬌。
直ぐに出して呉れ、大蒜の風味豊かな香りが鼻腔を擽る。
さて、先ずは麺の上に配された海苔、茹で野菜、通常の叉焼二切れ、
大振りなデロ~ンとした炙り叉焼をつけ汁に移したら、さあ頂こう。
二〇〇一年の新規開店当初から、何度も御邪魔し、味覚を愉しませて貰っており、
此処最近は何度目かの個人的流行が訪れており、頻繁に頂いている。
近場で頂ける「東池袋大勝軒」系の味なので貴重だ。
甘酸っぱさの有るあの味わいだが、つけ汁は濃厚さが有り、気持ち、
トロっとした感じさえ有る、国産素材のみを厳選した完全無化調スープ。
円やかさと滋味が溢れる、角の取れた優しい味わいにホッとする。
動物系の出汁は、豚背骨、鶏胴ガラ、拳骨、鶏油、豚背脂、豚頭骨、鶏足、
鶏頭から炊き出され、円やかでコクの有る味わいに仕上がっている。
二〇一六年の初めに、圧力鍋でプースーを拵える様になった影響で、
白濁し、随分と円やかに成り過ぎたが、全盛期の大行列だった頃の味に近い。
矢張り、地元の名店と言う認識に間違いは無い。
麺は、旧「六文銭」、現「フレンチバル セゾニエ」で打たれた自家製麺。
昨年春頃から、既製の全粒粉から、自家製の全粒粉に変えたとの事で、
玄小麦を仕入れ、より香ばしくする為に炒り、石臼挽きしていると言う拘り方。
澱粉等の混ぜ粉を使い、茹で時間を短縮し、もちもち感を出す事も出来るが、
小麦本来の香り、風味が損なわれるので其れをせず、麺を口に入れた瞬間、
広がる小麦本来の香りと風味全てを引き出す為、北海道産一〇割で、
全粒粉を始め、四種類を独自に配合していると言い、腰、張り、弾力が秀逸。
普通盛りで二四〇瓦、茹で時間に十二分要する此の麺が好きだ。
「麺屋」と屋号に冠するだけあり、麺への拘りが味に表れている。
中盤、「青森生にんにく」を投入すれば、一気に風味が高く成り、
大陸の赤化された大蒜とは出来が違い、兎に角、風味が最高。
青森から直送と言う高級大蒜は、辛味も程好く、パンチも効いていて最高だ。
刻み方も粗過ぎず、かと言って液状には成らず、絶妙な粒子。