◆「らーめん 元楽」【蔵前】
◎「特製元らーめん」六五〇円
…木曜日。
今週は四日間しか労働していないが、調子が戻らない所へ、悶着に巻き込まれ、
更には、勝手の分からない引き継ぎ業務に難儀し、ゲヴォが出そうな毎日…。
今週末で再起動したいと思うも、如何せん、二日足らずでは不可能。
既に、サザエさん症候群も覆い被さっているので、元に戻すどころか悪化か。
さて、話は遡って木曜日。
前日に発生した悶着の対応に朝から追われ、絹漉し豆腐の様な心は複雑骨折。
剛毛に覆われた、鋼の様な心が欲しい…。
そんな対応の合間を縫って、昼御飯を摂りに、寸隙を突いて一休み。
四月二十三日以来、一ヶ月振りの此方へ。
暖簾を跳ね上げ、年季の入った引き戸を開けて店内に入れば、中々の混雑。
券売機で食券を購入するが、すっかり「こぶためし®」は我慢出来る様に成り、
ラーメンのみで十分な程に少食に成ったので、「特製元らーめん」のみ。
冷水を汲み、空いている席にヨッコイショーイチ。
食券を提示し、毎度、「背脂たっぷりのラーメンですが」と訊かれるが、
こちとら、給油に来たので、「大丈夫です」と確りと突っ撥ねる。
冷水を呷り、悶着の対応を如何すんべぇかと、頭を悩ませ、心を折る…。
厨房内は平均年齢は高目の名うての職人と言った風情のおやっさんで、
今回は三人体制で、かぐや姫と同じ編成。
山田パンダ役のおやっさんが背脂をチャッチャとし、伊勢正三役が配膳。
まあ、誰が南こうせつ役だったかは不明だが…。
相変わらず、丼の外側にも背脂が飛び散り、何とも魅惑的。
先ずは蓮華を手に取り、プースーから啜ろう。
丼の中程から撹拌する様にして啜れば、ほんのりと甘味が感じられる。
プースーはロイクーだが、塩っぱいと見せ掛けて、実に芳醇で円やか。
店内に醤油の薫りが充満しているが、濃い味ではなく、上品さすら漂う。
コクが有り、香ばしい醤油ダレは切れ味は鋭いが、角の取れた円やかさ。
豚骨スープには、豚骨の中でも大腿骨である拳骨だけを使用し、
軟骨部分が多く、膠原質を多く含んでいる為、長く煮込むと車厘状に成り、
円やかな味になると言い、徹底的に灰汁を取り乍ら、野菜、鶏ガラ等と一緒に、
三日間煮込み、濃厚なスープを作り出すと言う触れ込み。
主役とも言うべき背脂は、厳選した物を炒め、下茹でし、手洗いして、
余分な脂肪や汚れ、灰汁を取り去り、豚骨スープで二時間煮込むと言う。
麺はと言うと、此方では五種類の麺を使い分けていると言い、
此の「特製元らーめん」には、中太の真っ直ぐな麺を使用している。
背脂を確りと絡め取る様にして纏わり付き、プリッとした食感。
具の叉焼は、厳選した豚のバラ肉を使用し、丁寧に一本ずつ筋切りして、
余分な脂身を削ぎ落とし、一九九五年の創業以来受け継がれて来た秘伝のタレで、
肉の美味しさを閉じ込めたと謳い、一本二八〇〇円で店内でも販売している程。
蕩けると言う感じではないが、プースーの熱で戻され、箸で切れる程に軟らかい。
具は他に、濃い目の味付けが良いロイクーな麺麻、茹で玉子半個、葱。
麺麻、良いわね。
最後は背脂たっぷりのプースーを飲み干し、給油を完了するが、
其の日一日で瓦斯欠に陥る高燃費な、型は古いが時化にも弱いおぢさん…。