◆「川魚料理 うな登」【宮原】
…昨晩。
毎日ぐったりする事ばかりで、其れに加えて此の異常な蒸し暑さ。
汗拭き用の輪奈織の綿織物が常にびしょ濡れで、絞れる程に汗だく。
毛穴から噴き出す豚骨スープの量は、稽古終わりの序ノ口の力士の様で、
こんな調子じゃ夏を越せないので、ちったぁ、無駄に精を付けてみよう。
折しも、土用の丑の日なので、鰻を頂きに宮原の此方に初訪店。
店内に入ると、持ち帰りの鰻辨當の客が犇めいているが、座敷席は空くと言う。
暫し待ち、持ち帰り客が片付いた所で、畳敷きに上がってヨッコイショーイチ。
…身体が異常な迄に硬いので、地べたに座るのが頗る苦しい中、
献立表を見れば、一年で一番の稼ぎ時の土用の丑の日は、提供する物を絞り、
繁忙に対応している様だが、酒類は確りと有るので、先ずはルービーを発注。
昼間に「らーめん よし丸」で瓶麦酒を飲ったが、とっくの疾うに抜けている。
大き目の取っ手付きの洋杯はずっしりと重さが有り、中のプリン体も旨い。
御通しは甘酢のテレレの捏ね。
…鰻も発注したが、出来上がる迄の繋ぎにと、御決まりの肝焼きを発注。
「鰻カブト」等、多種多様な串焼きを頂いたが、肝の弾力とほろ苦さが良い。
卓上の山椒を振り掛ければ、香りも良く、ずっと噛み締めて居たい。
酒を御替わりしようと思ったが、グッと堪えて我慢、我慢…。
…さてさて御待ち兼ね、鰻重の御出座しだ。
鰻重、肝吸い、御香香が配膳され、先ずは、御重の蓋を開けよう。
シマウラのローターが、ヒメオトのチャンネェから貰ったバコタマテを
プンオーするかの様に開ければ、煙は出ず、チャンジィにも成らずに済む…。
おおっ、矢張り、鰻は魅惑的で蠱惑的だ。
箸を入れれば、いとも簡単に崩れる様に千切れ、白米と一緒に頬張る。
皮目はパリッと香ばしく、身はふっくら、ふわふわで軟らかくて蕩ける味わい。
鹿児島県産の鰻は身が締まり、肉厚で味が凝縮されていると言うのが特徴と言う。
タレは甘からず、辛からず、あっさり目の味わいだが、円やかさが感じられる。
嗚呼、日本人に生まれて良かった…。
鰻は頻繁に頂けないだけに、偶の機会はじっくりと、確りと味わいたい。
延々と食べて居たいが、旨い物はあっと言う間に胃袋へと収まってしまう。
鰻の稚魚の漁が今年は過去最低と聞いたが、今よりももっと気軽に、
手頃な値段で鰻が頂ける様に成ると言うのが理想だわね。
勿論、赤化された鰻は御免蒙るので、断じて国産だが…。
名残惜しいが食べ終え、幸せな心持ちで大人しく真っ直ぐ帰る駄目おぢさん。