◆「炭火焼肉 池田屋」【宮原】
…昨晩。
送り盆の此の日も、九連休の終わりが近付いている事を嘆き悲しみ、
食事も喉を通らない心持ちだが、如何言う訳だか、痩せる気配が無い…。
最後の二日は、大人しくヂッと過ごすより他無いので、九連休最期の催しにと、
二月一〇日以来、半年振りに此方で焼肉を頂こう。
痩せなくたって良いじゃないか、駄目人間だもの…。
◎「樽生(エクストラコールド)」五二九円
…予約した十八時半に到着し、席にヨッコイショーイチ。
先ずはルービーを発注するが、「ヱビス」、「エクストラコールド」、
「白穂乃香」の中から、一番チンカチンカな「エクストラコールド」で。
限られた時間しか洋杯に存在する事は無く、限られた店舗でしか飲む事が出来ず、
最先端の温度管理環境と専用機器が生んだ、氷点下の「スーパードライ」。
専用の洋杯を使用し、事前に氷水で冷やし、開栓後二日以内の新しい樽詰を使用。
そう言われちゃ、否が応でも美味しく感じられるわね。
◎「センマイ刺し」七四五円
…麦酒で喉も潤った所で、クーニーの前の繋ぎに摘みを発注しよう。
前回、前々回と頂いている千枚が有ると言うので、透かさず発注。
其の牛の第三胃袋は、胃壁が襞の様に幾層にも重なった独特な形をして、
柔突起が何とも卑猥で、コリコリとした肉襞。
酢味噌に唐辛子味噌を加えた物を塗して頂く。
恥骨の裏側の膣壁を舌舐めずりするかの様な淫猥さが恍惚ものだ…。
◎「ナムル盛り」六三七円
…箸休めに和え物も頂いてみよう。
菠薐草、膾、薇、萌やしの四種類。
何処かの国の様に、何でもかんでも、発祥は我が国だ等と厚かましくないので、
彼の国で生まれた物を、国産の食材で、日本人が拵えた物を美味しく頂く。
◎「厚切り上タン塩」一七一七円
…さて、さあ肉だ。
初っ端は牛とデープキッス、熱いヴェーゼを交わすと決めている。
謳い文句に、食感の良い厚切りの上タンで、焼き上がりを早くする為、
隠し包丁を入れているとの事で、備長炭の炭火の上で丹念に焼き上げて行く。
徐々に花が咲く様に切り込みが開き、表面は細かい脂の気泡がジヴジヴと、
音を立て乍ら踊る様で、搾った檸檬を塗して頬張れば、何!?此の旨さは。
表面はカリッと香ばしく焼き上がり、さっくりとした食感だが、
中は半生に近い状態で、蕩ける軟らかさで、思わず、余計に馬鹿に成りそう…。
◎「極上ハラミ」一七一七円
…牛と情熱キッスを交わした後は、御決まりの横隔膜に取り掛かりたい。
焼き肉に於いては、バラ肉は無くても良いが、腹身が無いのは困る。
此れも、此方に御邪魔したら欠かせない逸品。
霜降りで軟らかい和牛の腹身との事で、焼き過ぎない様に慎重に炙る。
吃驚する程に軟らかく、歯の無いエンペラー吉田でも食べられるだろう。
程好く入った脂は肌理細かく、座り小便して馬鹿に成りそうな程に旨い。
◎「赤身ロース」一〇六九円
…酒も「ヱビス樽生」、酎ハイへと替わり、肉も追加発注。
もう歳なので、バラ肉は厳しいので、脂身の少ない赤身に限る。
A五順位の赤身肉と言う事で、焼き過ぎると硬くなるので注意が必要。
さっと炙って火が通って頬張れば、しっとりとした口当たりで、
肉の旨味が凝縮され、肉肉しいのだが軟らかく、老人には持って来い。
◎「上ミノ」八五三円
…続いては、珍しい所で、此方では初めての「上ミノ」を発注。
言わずもがなの牛の第一胃袋だが、余り頂く機会も無いのだが気紛れで。
塩か味噌の用意と言うので、塩で御願いする。
此れも焼き過ぎると硬くなるので、火が入った頃合いをヂッと見計らう。
表面には隠し包丁が入れられてあり、シャキシャキとした軽快な歯応えだが、
噛み切れないと言う事は無く、手の込んだ仕事が光る逸品。
◎「厚切りハラミ」一〇六九円
…白米を発注したので、其の御数代わりと成る肉として、通常の腹身を発注。
最初の空腹の内に旨い、高級な肉を頂き、次第にプクマンに成って来ると、
味は二の次なので、此れで十分。
ジューシーで赤身の濃い国産の腹身と言う通り、「極上ハラミ」より、
さっぱりとして、弾力も有るが、其れでも十分に軟らかく、御飯が進む。
◎「上タン塩盛り」一三九三円
…厚切りに続いて、通常のも頂いて置こう。
タン下、タン先等、硬い部分を切除したと言う、良い場所らしい。
見るからに、何とも卑猥で、生前、舌技に優れた牛だった事だろう…。
焼き過ぎず、かと言って、若焼きではなく、絶妙な焼き具合を見極める。
此れも又、焼き過ぎると硬くなるが、さっくりとして歯触りで、
程好く脂も入り、稀少価値の有る軟らかい部位と言うのも頷ける。
◎「冷麺」九六一円
…すっかりプクマンに成ったので、〆るとしようかね。
こうも暑いので、冷たい麺が喉の通りが良く、宜しいかと。
麺は札幌から直送と言い、プースーは鶏ガラが基礎と成っており、
生姜の風味が効いた物で、具は朝鮮漬け、胡瓜、ハム、玉葱。
氷が融けて味が薄まってしまうのが難点だが、〆にはさっぱりして良い。
麦酒二杯、酎ハイ四杯を頂き、無駄に精を付けて帰るポンコツおぢさん…。